風の鳴る音
既刊情報
制作秘話93
かぐや姫の罪と罰
制作秘話92
竹取物語ネタばれ
制作秘話91
一番大事なこと
制作秘話90
小説家へのルート
制作秘話89
読みやすい小説を書くには
制作秘話88
平氏は本当に滅びたのか(ネタバレ)
制作秘話87
平家物語の名前
制作秘話86
「細かい」仕事
制作秘話85
意外な上達のコツ?
制作秘話84
物語創作最大の難関
過去の制作秘話一覧
中高生むけの作品

既刊の案内と情報はこちら

 

制作秘話 83

《其の八十三》

前々回の緩急の話の続きのような、一応おしまいまで小説一編を書ける経験者のかた向けの、演出のこつでしょうか。


アオリ(煽り)……これも、デビュー当初に当時の担当さんから指摘されたことです。
これから主人公によくないことが起きるときは、カラスがぎゃあぎゃあ鳴くとか、雰囲気を盛り上げることを一行二行入れろ、というもの。

文章だとつい伏線と似てしまいますが、映画ならBGMが変わるとか、曇ってきて画面の明るさや色が変わるとか、風か強くなるとか、そういう「演出に入る部類」ですね。
伏線は「情報に入る部類」ですので、ちょっとちがいます。

告白に成功したら、うれしくてうれしくて、世界がきらきらして見えるような風景を書きこむとか、そういうかんじです。


タメ(矯め)というのは、ここはぜひとも盛りあげないと、という泣きの場面とかラブシーンで、あっさりと文を流さず、描写を多めにすることです。
緩急のときに詳しく触れなかったので、追加してお話しします。緩急の急に入るのでしょうが、急すぎてかえって読者さんがついてけなくなって、盛りさがっては困るのですね。なので、急展開や急テンポではあっても、タメを入れることを意識します。

キャラがねばってみせる、というのかな。
崖から落ちるとき、あっさり落ちず、両手が片手になり、片手が指一本まで耐えて「んぐぐぐぐ」とぎりぎりまで震えながら力使ってから、落ちる、というかんじ。
なので「急」の場面にも、リズムが必要なんですよね、印象的にするためには。

大事なシーンはこってりと、でもやりすぎるとしつこいから、加減というか塩梅というかが、たいせつです。
世に出ている人気作品で、研究してゆきたいところですね、わたしも心がけています。


ヒキ(引き)は、漫画の連載だとたいてい入っています、ラストシーンですね。
「さあ、主人公ピンチ、どうなる!! 続きは次号を待て」という「いい場面で話が『続く』になっちゃう」あれです。

一冊の小説だと、これができるのは章や段落の区切りだけですが、すぐにその続きに入ってしまっては、意味がない。
しかし、複数視点を持てば、場面と視点と場所の切り替え(カットバックや回想も)で使える技です。
……が、やりすぎると読者さんが混乱します。

漫画の連載が毎回でもヒキを入れられるのは、別のシーンが入らずに続くからで、あくのは時間だけですよね。
そのシーンのことだけ考えて、読者さんは待っています。

これが全然別の場面を挟んでしまうと、かえって気が散って待っている気分がそがれたりしかねませんので、小説では気をつけて使わないとならない演出です。

(C)2005-2017 Yui Tokiumi all rights reserved