風の鳴る音
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制作秘話 8

《其の八》

今回は四之帖発売記念のネタばらしです。
四之帖の内容に触れますので、本文未読の方はご注意をお願いいたします。



まずは、あまりばれないあたりから。
ここ、見えちゃってますからね。
壱之帖の解説の冒頭に業多姫3つのテーマというのがありました。
同様に3つのキーワードというのもあるんです。
・約束
・親子
・旅
各巻に繰り返し出てくるのがこの3つだと、お気づきの方は多いと思います。
3つの言葉を材料にして話を作るのを三題噺といって、落語などによくある方法です。
時海もアイディアの大元は三題噺で始めることが多いです。


ここから本格的にネタばれです。

四之帖に民俗学的なモチーフとして登場させたのが「峠」「橋」「輪と結びめ」です。
「峠」は登ると一気に別の地域が眼下に広がりますよね。
別の世界への入り口であり、同時に自分の世界の出口、境界です。
古代の旅人は峠の神に捧げ物をして、違う世界でのエトランゼとしての自分の無事を祈りました。
今回鳴は帰ってきて、まず峠から元いた世界を観るのですが、変わってしまっていました。
実は彼女自身も変わっているのですが。

「橋」はこちらの世界とあちらの世界を結ぶものです。
橋がなければ渡れない二つの世界で、唯一の連絡通路なのです。
「橋」と「柱」は語源が同じだそうです。
柱は地上の世界と天空の世界を結ぶ橋。
「ジャックと豆の木」の豆が代表的ですね。
切ってしまうともう連絡できないから、大男から奪った宝は人間ジャックのものです。
「橋」の下には妖怪がいたり、式神がいたり、子どもがなぜか「橋の下から拾われた」とよくいわれるのも、そこが境だからです。
あちらの世界の様子がのぞき見でき、あちらから洩れてきたパワーが溜まるところと考えられてきました。
「橋が落ちた」というできごとに、鳴と颯音が距てられたことをもっとも象徴させたつもりです。
「まだ橋はある」という颯音の言葉、二人の結びつきの強さが「隔たてられた境遇」を跳ね返しています。

「輪と結びめ」参之帖でも目印として木の枝を輪に結んだ形が出てきましたが、四之帖ではずばり「輪の歌」としました。
「結びめの文字があった」という表現、「重なる」とか「二重に使う」とかいう言い方もできたのですが、あえて「結びめ」です。
「果てしない物語」(M・エンデ)に、2匹の蛇が互いの尻尾の先をくわえて輪になっている形が出てきますよね。
あれは「永遠の循環」を表すマークなんです。
直線は、時間が何時方向に流れて、けして取り返せないことを表します。
それが端と端のある一本の紐だったら、「有限」つまり始まりがあって、終わりがあるという意味です。
それを結んで輪にすると、終わりがなくなり「永遠」に変わるという意味になります。
なので、「結びめ」は「永遠」のシンボルとなるわけです。
ケルト文様や縄文土器や南米の古代文明に渦巻きと結びめをイメージしたモチーフが見られるのは、この「永遠パワー」が有限な人の命に少しでも注がれてほしい、という祈りではないかという研究者もいます。
「輪の歌」も、古代のそんな祈りの気持ちが残っていて作られたのではないか、という設定です。

おまけ、あるとても有名な、映画化もされたミステリのオマージュがワンカットだけ出てきます。
どこか判るでしょうか(笑)。
地下通路……「ダンジョン」といえば、時海は「ゲド戦記」供淵◆璽轡絅蕁Ε襦瓮哀Εン)なんですが(笑)。

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