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制作秘話 74

《其の七十四》

今回も「近づけ企業秘密!」なのかなぁ。
物語に「厚み」を出すには、というお話にしますね。

いや、「厚み」というのは正確じゃないかもしれません。
物語に必要な流れを整理したら、厚みになってくる、みたいなことなのです。


物語にはおおざっぱに分けると二つの流れが必要だと思います。
はい、ここでもう一度「物語とは主人公の身に生じた葛藤の解決過程である」。

なので一つは、葛藤を引き起こした原因を撲滅して解決する、目に見える物理的な流れです。

もう一つは、主人公を初めとしたキャラたちの心のうちの変化です。ラブストーリーなら、恋愛の進展と言い換えてかまいません。

流れは二つある、と知っただけでも、ずいぶん整理しやすくなると思いますが、いかがでしょうか。

まあ、恋愛の進展だけでできている物語もありますし、本格ミステリーのように登場人物は双六のコマでしかない扱いを受け、ひたすら犯人捜しを目的とする物語もあります。
けれど、私の好みとか書きたいものという自分中心な考えでこのコラムはやってますので、流れは二つってことで、ご勘弁ください。


私は執筆時のイメージとしては、織物に例えてます。
私が幼かった頃、自宅では祖母が機(はた)織り=昔話の鶴女房のように布を織ることをしていました。いまでもうちのへんでは、まだ機織りをする高齢の女性がいます。

その経(たて)糸を織る機械にセットするのが、けっこう重労働で手間のかかるものでした。すぐに糸がもつれちゃうんですね、長いから。
それをていねいにくしですきながら、切らないよう、絡まないように、歯車がサイドについたドラムへ巻きつけてゆく。

この経糸が、「原因を撲滅する物理的な流れ」と考えてます、私。段階によって色が染め変えてあるの。

そして、織りこんでゆく緯(よこ)糸が、キャラの心理です。
緯糸は小さな管に巻きつけて、ほどきながら経糸をくぐらせるので、一度に大量には通せません。
しょっちゅう継ぎ足さないとならないし、糸を継ぎ足して替えたときに色も変えることで模様にもなるのです。

この緯糸の管の一つずつが、それぞれのキャラの視点であり、変化だと私はイメージしてます。
はっきりした色の、しっかりした糸を入れれば、織物は鮮やかで丈夫で、厚みのある仕上がりになるわけですね。


ということで、話の流れがどっちかに偏ったら、つまり経糸のもつれに気を取られて、もつれを避けるように緯糸がすかすかになったら、織物としてはそこが弱くなってしまう、穴が空いちゃうかもしれません。

常に、経糸はもつれがないよう、緯糸はしっかりと厚く密に織りこまれるように、整理しながら書いてゆくようにしてます。

ときには、できたところを戻って、緯糸を足してより模様をはっきり浮きたたさせる、みたいなこともしなくては、しっかりした仕上がりにならないのですよね。

そして、経糸と緯糸は、しっかりとからんでいないと、織物ではないわけです。これも穴が空いちゃう。

この二つの流れはしっかりとからんで切り離せないけれど、経糸と緯糸、それぞれだけを追えば、もつれていなくて、整然と流れている、でないと織物に織り傷ができたり毛玉があったり穴が空いたり、みっともなくなってしまう、というイメージで書いています。

物語の流れがごちゃごちゃしてきそうになったら、どこの分が経糸で、どこらへんが緯糸か、それぞれ意識して分けた上で別々に流れを確認、改めて二つをしっかり繋ぎからめる言葉を足すかんじでしょうか。

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