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《其の七十二》

このコラムも長く続けていると、だんだんネタがなくなって、重要な企業秘密までもしゃべらないとならなくなりますね(笑)

今回は「発想の展開」を私がどうしているか、というあたりです。
アイディアをプロットにまで育て、さらに物語全体を見通すには。

これ、数やって慣れるしかないんですけど(笑)

といってしまえば身も蓋もないですね、すみません。

時間をかけても、絶対に大ヒットする物語世界やキャラが作れれば、それでもかまいません。
編集さんは待ってくれます、絶対に大ヒットするのなら。


しかし私のような才能の足らない者は、「ヘタな鉄砲数打ちゃ当たる」で、ものすごい数のネタ出しをして、他人のアイディアを参考にしてでもひねり出さねば、ご飯が食べていけないわけです。情けなや。

なので依頼があれば、「どんなの書いてほしいですか?」と編集さんにうかがって、一つ二つのキーワードを聞き出し、そこから一日で企画案をまとめる、みたいな方法になります。

自分で「こんなのいいかな」と思うものを提案することもありますし。だいたい月に一つは自主的に新しい企画を手書きメモにして、よさそうならデータ化してます、すぐに提案できるよう。
それ以外にも、編集さんのキーワードで、ゼロから立ち上げることもある、というわけです。


具体的に例を挙げると……「メガネ恋。」だと、「魔法のある異世界でラブコメ、ただし斬新で特徴的なポイント=『売り』がある」が、編集さんからの指定条件でした。
この「売り」=読んでみたいと思わせる「一言・一行」が帯に書ける、は商業出版では必要ですので、プロを目指される方は心に置いておくことをお勧めいたします。

で、どうしよう、と編集さんと直接顔を合わせて話し合っているときに、まあ、いろいろ話してもなかなか「斬新な」のは出てこなかったんです。

なんか行き詰まってしまい、頭抱えて、「どんな斬新な設定にしても、けっきょくはキャラ立ちが肝、キャラとキャラの関係性で読ませるんでしょ」というような方向に会話が進み、ふと私が「カバーイラストのキャラ全員メガネかけていたら、斬新でインパクトありますよね、たぶん誰もやってない」と言ったんです。

「全員メガネ!」と編集さんは大笑いして椅子から転げ落ちかけ、「それ、考えてみてください!」

私は「メガネ」と「魔法のある異世界」を融合させなくてはならなくなったわけです。
ただキャラ全員がメガネかけているだけじゃ、意味がないんです。全員メガネ、に最も大切な意味がある世界を作らないと。

なので、「メガネを魔法の『杖』の代わりつまり『媒介』として使っている世界」でまずメガネと魔法を合体させ、「その魔法が全ての動力・エネルギー源になっているから、魔法使えないと、現代人=私や読者さんたちが停電したとき同様に困ってしまう」と展開させたわけです。


この「発想の展開」がいかにすばやくできるか、が「技術の積み重ねで書くタイプのプロ」=職人の技というか、ぶっちゃけ、経験値が物を言う「慣れ」ですね(笑)
ネタ切れというのは、単にこの「展開」ができなくなってしまった状態ではないか、と思うのです、私個人は。

「展開」を方程式みたいに、いくつかの基本や理屈で支えておけば、展開できなくなりそうになったとき、基本に立ち返ることで、「次のネタ」を私は見いだしています。

その方程式が企業秘密、なんですが、特別に公開しちゃいましょう。
っても、私のやり方であって、これは作家さんによって違います(ゆえに企業秘密)。
ベストの方法でもありませんし。っつーか、ベストだったら、私の書く本はもっとヒットしているはず(苦笑)


まず、これまでにこのコラムで書いてきた、「物語創作の基本」をもう一度確認させてください。

「物語とは、主人公の身に生じた葛藤の解決過程である」
「主人公には、味方=主人公の葛藤が解決するとうれしい人=護りたい人・護り合う人、と、敵=主人公に葛藤を解決されると困る人、が必ずいる」

この二点です。シンプルですね。


「葛藤の解決」は「夢の実現」とも言えます。日本で一番売れているマンガを例にすれば「海賊王に俺はなる!」ですよ(笑)

もう一つ、ベスト3くらいに売れているマンガを例にすると「元の体に戻ると、禁忌を犯して体の一部を失った兄と、体全部を失った弟は、誓った」です。
葛藤の解決であり、夢の実現であり、最終目標です「元の体に戻る」は。

この「葛藤の解決」に向けて動き続ける主人公に、味方と敵が現れる。
で、理由が生じて「敵だった者が味方になったり」「味方が敵になってしまったり」して、話が盛りあがるわけですが。


で、思いついた「アイディア」が、いかにこの「葛藤の発生」「味方になってくれる理由」「敵になる理由」に効率よく使えるか、を考えるわけです。
ぴたっとはまって、説明が少なく一発で読者に物語の構造が見えて、しかもおもしろそう、できたらまだ誰もやってなさそうなネタ、が展開させる方向性になります。

ここで気をつけなくてはならないのが、「物語で大勢がおもしろいと思うパターンは、実は限られている」です。
これも以前書いたと思います。基本の三つめです。
「誰も読んだことのないストーリーにしよう」といじくり回すのは、無駄な努力というもの(笑)

これを逆手に取れば、「限られたパターンに当てはめ」れば済むんですから、楽なものです。
無限のパターンを探らなくてもいいんですよ。
だからこそ、すばやく考えられるようになるのです、この「よくあるパターン」をいくつか知っていれば。


あとはいかに「よくあるパターンだね」「ぱくりじゃん」と読者さんから思われないようにするか、ごまかす、だけです。

この「ごまかし」こそ、「展開」の大切なところです。
そう、「ごまかす」のですよ!!

まずは、今まで既に出ているネタをできるだけ知っておく、でないと「ぱくり」になってしまいます、これはやってはいけないことです。

なので「今までに誰もやってなさそうなネタ……ちょっとしたもの」で、「よくあるパターン」を塗り重ねてごまかす。

ほんとにちょっとしたもの二つ三つで、塗ればいいのです。壮大にストーリー全体を「誰も読んだことないものにするぜ」とがんばるのではなく。

ちょっとしたもの、それだけで、「今までに読んだことがない」気がする、立派な「新しい物語」が生まれるのですよ。
ちょっとしたものとはつまり――。


おおっと、これ以上はさすがにトップシークレットですので、この辺で失礼いたします(笑)

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