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《其の七十一》

「好きです鈴木くん!! ―ウィズ・プレシャス・ハート―」は短編連作集の形をしていますが、長編と同じ読後感をめざす、という独自の構成になりました。

ということで、今回は短編と長編についての、だらだらとした(汗)お話です。(「ウィズ・プレシャス・ハート」のネタばれはありません)

まずは定義から。
書く人によってもジャンルによっても違うのでしょうが、私の場合、原稿用紙換算で50枚までを短編、そこから200枚未満を中編、200枚以上を長編、の目安にしています。

実際にお仕事の需要があるのが、50枚以下の短編か、児童書で長編となる200〜250枚、ライトノベルで250〜350枚、です。一般向けだと300枚を超えるでしょうか。

児童書でもフォア文庫は一冊120枚くらいですが、「コウヤの伝説」は完全にシリーズ各巻の話が続いていましたので、この長さで区切って語れませんよね。


私はもともと短編が苦手でした。学生時代は長ーい話しか思いつけなかったんです。へたするとそれこそ原稿用紙何千枚あれば終わるんだろうみたいな。

なのでマンガの投稿に必要な16pで話をまとめることができず、マンガ家はあきらめて(いや、絵が下手だったことも大きいぞ)小説書きを目指すことにしました。

(それでもデビュー作は原稿用紙200枚もいかない「短い話」のつもりでいて、400枚になりました。素人時代の私は話の長さが読めていませんでしたねえ)


しかし。
いざ、デビューということになってみると、最初に書くのは原稿用紙40枚の短編だったのです。
10回以上没になりました、ええ。

同時デビューのかたがたが先に書き上げたというのに、私は「デビューのためのあれこれが一区切り着いたら開かれる」授賞式の段階でも、まだ書けていませんでした。

書き方がわからなかったんですよね、短編にしやすいゲストなり小道具なり設定を作ってオチをつける、ということができなかったんです。
やったことなかったから。童話で5枚とか、児童向けで10枚、というのは入選していたんですけれど。

初めは受賞作のあらすじみたいのから出発して、担当様のご指導を受けつつ試行錯誤の末、やっと「あ、そうか」と思いついて書いたのが「撫子色の約束」(「業多姫 いろどりつづり」収録)です。

でもこの経験で、短編を書くのがおもしろくなりました。なぜかついでに長編の長さ(枚数)も読めるようになったんですよ。


実のところ、児童向けアンソロジー以外でちゃんと本になった短編って、この「ウィズ・プレシャス・ハート」が「いろどりつづり」についで2冊目だったりもするんですが(笑)

短編らしさは1〜3話でキャラが遭遇するエピソードにあり、長編らしさはメインストリームにあります。


長編だと、章で区切って書いてゆくことになります。現在のラノベ(トータル256pくらいでできてます)だと5〜6章です。
本文のみだと240p足らずになるので1章40〜50pが目安。

自分は割と章の長さ(各章のページ数)が揃う方だと思うんですが、最近はもう慣れで書いてるので、無意識に書いててもだいたい等間隔で区切ることができます。
この章40pで、とプロットで宣言すれば、だいたいそうなる(笑)。体が覚えてしまったかんじですね。

これから小説を書かれるかたでしたら、やはりプロットをつくって、ここからここまでを○○目標で、と区切れば、無駄な描写がだらだらしたり、不足したりを防げますし、書いていくときの目標にもなるでしょう。


長編を書くのはマラソンに似ていて、スタートしたときは先の長さにイヤになるし、真ん中過ぎたあたりではランナーズハイだし、最後の方は「あと少しでゴール」と歯を食いしばり残った力を振り絞る、というかんじです。

その「給水ポイント」とか「時間計測ポイント」みたいな目標地点が、章の区切りになるんじゃないかなと、思うわけです。


長編が得意なかたと短編が得意なかたと、やはりあると思います。
プロだと両方書く機会がありますが、それでもどちらかがよりすぐれているということはあるでしょう。

ラノベの新人賞は、たしか電撃とコバルト以外は長編賞しかないですよね。あ、待った、ルルルにも短編賞にあたるものがあったかな、そういえば。

でもまあ長編が多いですし、一般文芸も長編が多く短編で応募できる新人賞は少ないはずです。


なので長編の腕を磨くのがよいことになるわけですが、1000枚書いても終わらない、というのでは応募先が限られてしまいます。
話を綺麗に終わらせる練習として、まずは短編を書いて、それに要素を足してふくらませ、応募できる長さの長編に持ってゆく、という練習方法もあるのかもしれませんね。

逆に長編のアイディアを凝縮しようとすると、長編のあらすじかプロットみたいな短編、という私のデビュー当時の失敗みたいになってしまうかもしれません、と経験からひとこと添えておきたいと思います。

短編と長編、それぞれに向いたアイディア、発想、ネタというのは別ものですよ、と私は思ってます。
短編にはオチがあるのが基本。

そして中編って、私も実は書き方がいまだ判らないんです……お仕事の依頼がもしもあったら、長めの短編としてごまかすしかないかもなあ。

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