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制作秘話 7

《其の七》

今回は「時海がしている物語の創り方の努力目標」としました。
お手紙でもBBSでも「小説家になりたい」「漫画家になるのが夢」と書いてくださる方が多くいらっしゃいます。
「こうすれば絶対なれるよ」という方法は残念ながら存在しません。
「自分はこういうところに気をつけたら、結果的に小説家になれて、多くの皆さんに自作を読んでいただけるようになった」という内容の本は、既にたくさん出版されていて、ここで私が書くことよりも当然内容が優れていると思います。

ですので、あくまでもご参考程度にお読みいただけたらと存じます。
時海もまだまだ修行の緒に就いたばかりで、ここに書くことは、毎日「こういうふうにしなくちゃ」と努力している項目なんです。

時海は「物語」には「著者以外の他人が読んで読みやすい」ものと「著者以外の他人が読んで読みにくい」ものがあると思っています。
「読みにくい」から書いていけないということではありません。
自分自身のために書くにはどちらでも自由でよいのです。
自分が楽しければ。

でも小説家や漫画家になりたいからには、「たくさんの人に自分の書いた作品を読んで楽しんでもらいたい」と思っているのではないでしょうか。
だとしたら「読みやすい」ものを書かないといけなくなりますよね。
「読みやすい」には、「すごくどきどきして読みやすい」とか「とっても笑えて読みやすい」とか「共感できて読みやすい」とか、いろいろと種類があるわけですが、おしなべて「○○で読みやすい」の「○○」が多くつけられる、そんな評価をされる作品ほど、数が売れるようです。

それだけ、たくさんの人の「読みやすさ」にはまるからですよね。
この「読みやすさ」は「好みのつぼにはまる」と言い換えることもできます。
よく一般的に「面白い」「面白くない」と表現されますが、少なくてもこのご時世で商業出版される本は、「面白いと思う人がたくさんいるだろう」と出版社が判断したから書店に並んでいるわけで、「面白い」のは「読んだ人の好みのつぼにぴったりはまった」からなのです。
もしそうでない場合ば、好みがずれていただけで、同じ本を「面白い」と思う人も別の場所にいるのではないでしょうかねぇ?

この「ベストな読みやすさ」「多くの人の好みのつぼにできるだけ広くはまる」にはある程度法則があることが、判ってきています。
「小説の書き方」を教えるカリキュラムを持っている学校へ行って授業料を払うと、教えてもらえます。
いくつかある法則のうち、時海が取り入れて実現しようと努力している項目を、一部公開してしまおうというのが、今回の趣旨です。
あうあう、前ふりが長くて、すみません。

それはずばり、「構成・世界観・キャラ立て」に留意、です。
構成はよく一般に「起承転結」といいます。
時海はこれを勝手に「起承転山結」に変えています。
山はクライマックスですね。
長編になると「起承転小山転大山結」くらいになります。
物語の流れと盛り上がりは一次関数の直線グラフではなく、二次関数の曲線をイメージし、しかも間に一回は谷を入れます。
「業多姫」の各巻のちょうど真ん中あたりに、必ず本音のもれるラブシーンがあることに気がついている方はいらっしゃいますか?
あれは小山と次の転を切り替えるための谷間を意識して設けています。
大きくジャンプするには、一度沈みこんで反動をつけた方がいいですよね、立ちあがった状態からより。そういう谷間です。

世界観にオリジナリティーを出し、かつそれを分かりやすく説明するというタイプの物語を読むのが時海は好きなので、自分でも真似しています。
ただ、「有名な先行作品に雰囲気が似ているから、安心して読者が手に取りやすい」という事実があるのも確かですから、これは好みの問題だと思います。
「読んだこともない面白い展開」というのは、実はありえません。
物語の展開は(分類数は研究者にもよりますが)、昔話や民話で10パターン前後、現代の創作でもっと複雑になっていても20数パターンが組み合わさっているのであって、それが「読みやすいと捕らえることができる」パターンの上限数だからだそうです。
では何が「読んだこともない」と思わせるかというと、世界観や状況設定やキャラの工夫なのです。

時海が工夫しているのは、このうちの状況設定・舞台設定です。
具体的には、「支配する側、つまり教科書に出てきて暗記してテストで答える人物や場所」がいっさい出ない「日本の時代小説」です。
教科書の歴史年表ですかすかしている(笑)あたりの年号、朝廷や幕府がある場所から離れた地方、支配される側の民ばかりが登場、こういう物語は実際少数派なので、時代を変えてはいろいろと書いてみたいと思っています。

そして一番重要だと考えるのが、キャラ立てです。
いかに「実際に生きているように身近に感じられる、存在感のある」キャラを書くか。
ストーリーの構成……エピソードの意外な組み合わせ方とか、効果的な伏線の引き方とか、葛藤の追いつめ方とか……とキャラの存在感とどちらかを選ぶとしたら、時海はキャラを取る方です。
私自身の心に強く残っている「過去に読んだ本や漫画」で、「主人公はどんなやつだったか忘れたけれど、ストーリーがすごかった」のより「細かいストーリーは思いだせないけれど、とにかく主人公がこんなキャラだった」の方が圧倒的に多いからです。
これも好みの問題ですから、絶対にキャラ優先がよいとはいえませんが。

キャラが立つとは、「このキャラはこういう状況ではこう発言してこう考えてこう動く」と、あらゆる状況に置いてパターンが確立することで、時々世間でいわれる「他の誰も書いていないような、ぶっ飛んだ目新しいキャラを考えだす」という意味ではないです、時海の場合。
キャラが立てば、自然に勝手に動いてエピソードを創ってくれちゃいますから、書いていて楽だし、びっくりするし、愉快痛快です。
勝手に動きだす――これがあるからこそ、いくら物語を書き続けても苦痛ではありません。

これが今時海が努力している「より読みやすい物語」への努力目標です。
よろしければご参考にしていただけたら、幸いに存じます。
ご指摘について考えることが時海自身の勉強にもなりますので、ご意見やご質問がございましたら、謹んでお受けします。
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