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制作秘話 66

《其の六十六》

ファンタジーの分類、といっても私が勝手に決めているところもあるので。「ファンタジーをお願いします」と依頼されたときに、「どういうタイプのファンタジーですか」と私が尋ねるときの基準をご紹介します。

それは三つ。
*ハイ・ファンタジー
*往還もの
*オチもの

以下、有名なファンタジー作品の設定の微妙なネタバレがあるかもしれませんので、あしからずご了承ください。


まず、「ファンタジー」は、非日常要素がある物語、というふうに私は考えています。SFやホラーも範疇なのでしょうが、私は恋愛ファンタジーとか恋愛アクションファンタジーと呼ばれるものしか今のところ書いていないので、その中で。

ハイ・ファンタジーは、読者さんが生活しているこの世界とは全く繋がっていない、別の物理法則(魔法とか)があったりこの世界には居ない生物がいたり、空に浮かぶ天体が全く異なったり、逆に割と我々の世界に似ていたりする異世界が舞台です。
その中で、その世界の法則や社会や自然に影響された物語が展開します。

有名な作品では「指輪物語」とか「モモ」「ドラゴンボール」、最近の女子ラノベは時代もの以外ほぼこれですよね。
いかに異世界を作りだすか、が醍醐味であり、むずかしいところです。世界一つ作っちゃうんですから。


往還ものはハイ・ファンタジーの世界へ、読者さんと同じ生活環境の主人公が行ってしまう、というものです。
往還、の通り異世界で冒険して、人間的に成長してまたこちらの世界へ還ってくる、のが基本です。

有名な作品だと「ナルニア国物語」や「果てしない物語」。「遙かなる時空の中で」シリーズも基本的にはこれになるわけですが。
「十二国記」や私がノベライズした「遙か4」のように理由があって主人公が行ったきりになるのではないか、というのも応用としてはあります。

読者さんの代表、読者さんの代理としての主人公なので、異世界の説明がとてもしやすい、という特徴があります。
冒険が終わったら異世界と別れなくてはならないため、行った先で恋に落ちたりしてしまうと、ハッピーエンドが難しく、落としどころはすなわち執筆の腕の見せどころになりますよね。


オチものは、往還ものとは逆に読者さんのいる日常に非日常存在がやってきて、騒動を巻き起こす、というもの。
空から宇宙人が落ちてくる話がよくあるから、オチものというらしいです。「ケロロ軍曹」とか。

代表的なのは「ドラえもん(未来のロボット)」「ウルトラマン(宇宙人)」「ヒカルの碁(幽霊)」「夏目友人帳(妖怪)」というかんじで、日本の漫画にはこのタイプの傑作が多いように思います。

これも最終的には、非日常存在が元の世界へ還ってしまうのが原則なので、ハッピーエンドではない別れが描かれる可能性が。
ずっと共存する、という選択も無いわけではないのですが、別れることが「大人になる」を意味するので。


応用として、「ドラえもん」長編映画のように、オチもの設定のまんま主人公達が異世界へ往還するパターンとか、ハイ・ファンタジーでのオチものとか、ありえます。

また、平凡な少年が戦闘ロボットのパイロットになってしまう、というロボットもの(SFでしょうけど)のように、往還ものともオチものともとれる、中間で日常と非日常が出逢うものもあります。

主人公が非日常と出逢う対象に選ばれるのは、偶然であったり、本人の知らなかった必須の要素があったり、いろいろですが、読者さんの代表というところから外れないのがポイントではないかと思います。

たいていのファンタジーはこのどれかに分類できると思うので、よろしければちょうど読み終えたファンタジーを分類してみてはいかがでしょうか。


ファンタジーは非日常の事件やできごとを通して「大人になるための経験を積む」という文化人類学でいう「通過儀礼」の要素があります。

以前もこの制作秘話のどれかで書いた気がするのですが、昔は実際にバンジージャンプとかやっていたのが、ファンタジーの語りを聴くことでバーチャル経験値を積んで代用する、ということになります。
「読書をしよう」と学校で先生から言われるのも、これに当たるんですよね、つまりは。

私は「現実逃避の癒し」になればいいかなと思ってるんですけど、ファンタジーに接することが。

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