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制作秘話 64

《其の六十四》

漫画のノベライズでは何に留意するか、担当編集さんと話をしてきたことをここでまとめたいと思います。
といいますか、現在進行形なわけですけれども。

私も学生時代はオリジナル漫画の同人を少しだけやったことがありまして、全然漫画描いたことないってわけじゃないのです。
なのでどうやって漫画は描かれているか、手順みたいなものは、一応知ってるつもりです。
むしろ小説を書き出した方が、ずっと後なんですよ実は。


漫画と小説は違う表現媒体です。
漫画にしかできないこと、がたくさんあって、それが漫画の魅力・おもしろさなんですよね。
おもしろい漫画だから小説にしてもおもしろいだろう、と簡単にはいかないこともあると思います。


私が心がけているのは、絵をそのまま書き起こすというか見た目そのままよりも、濃く表現すること。
コマの間に流れる空気、キャラのコマの外にはみ出ている部分、コマの奥底まで感じ取って、漫画をおもしろいと思うのだから、表面的な絵だけなぞっても。

漫画独特の表現を損なわないよう、文に移植する、ということも考えます。
美形キャラが花を背負っていたり点描きらきらが飛んでいるのを、文章ではどう書けば。そのまま「バラでも咲いてきそうな」と書くのは花園にトリップしただけみたいですし。
漫画では「花を背負う」というあくまでも「記号」で表される「文字ではない」雰囲気を、小説の文脈を乱さない範囲でどう言葉にするか。
悩みます。文体、単語の選択、比喩、文面の印象。


それから。
いわゆる捨てごま、チビキャラで軽く流されたコマ、写植ではないふきだし外の手書き文字の台詞、こういったノリの軽重や画面のリズムを、文章表現のリズムや単語の量で表すことはできるか。
逆にキャラがシリアスなアップになるコマはどう文章にして、読者さんの印象に残らせるか。
その漫画の持つリズムも、中に流れる風も光も闇も、再現したいと考えています。

漫画の中の感動的な愛を、言葉はもう要らない、絵だけで表現された感情を……言葉でどう伝えよう。
それを考えることは最大の苦しみであり、最高の喜びです。

まだまだ努力が足らず、表現の研究は途上ですけれど。

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