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制作秘話 62

《其の六十二》

時海が考える「書いた小説がうまく見えるコツ」です。
いきなり結論をまとめると、ポイントは三つ。

・意外性がある
・緩急がある
・無駄がない


一つずつ説明しますね。
まず、「意外性がある」

思いがけない設定で他に読んだことがない、というものでもいいですし、話の大逆転でもいいです。

他で読んだことがない、というのは、以前もこのコラムで書きましたが、ストーリー展開にはたぶん難しいと思います。
多くの人が読んでおもしろいと思うパターンが決まってしまっているからでしょう。共感できるキャラ、というのもたぶんそうです。

なので、舞台の設定とか、ギミックの組み合わせとか、そういう部分での個性の発揮です。

話の大逆転……すごくおおざっぱにいってしまうと、それがキャラの場合、二つに分類されます。

製作秘話のごく初期に書いた気がしますが、ストーリーの最も基本は、三人の登場人物です。
主人公・主人公の味方・主人公の敵。敵が主人公の夢や平和を壊し、主人公はそれを取り返すため、味方と関わりながら、敵を倒す。

なので「敵と思っていたら味方だった」「味方と思っていたら敵だった」というのが逆転になります。
いきなり理由もなくひっくりかえっては、主人公も読者さんもびっくりしすぎてどう対応していいかわからないので、「伏線」を引く方がいいでしょう。

味方が突然理由もわからず敵になった、は「平和を乱した」そのものですから、これとはまたすこし別なのかな、と私は考えてますが。

キャラに限らず、設定上の大逆転、というのもありです。
「西遊記」で、孫悟空が世界の果てだと思って柱にサインしてきたら、お釈迦様の手の上を出ていなかった、あんなかんじです。
叙述トリックもこれですよね。

「やられた」と読者さんに言わせたら、作者の勝ち、と私はいつも思ってがんばってます(笑)


つぎに、「緩急がある」
アクションシーンの連続、だと読み疲れます。ずっと緊張が続くので。
間に一休みの静かなシーンがあれば、次のアクションシーンが盛りあげやすい。

しかし、私のような「アクション大好き」とは違う小説の方もいらっしゃるでしょう。
そのときは静かで雰囲気のあるシーンばかりではなく、どきっとするシーンも欲しいな、と。

つまりあれですわ、例えるならいくらラーメンが好きでも、毎日三食ラーメンを一ヶ月間食べ続けるのはきつい、ということですよね。多くの人はおそらく。
いえ、私はラーメンが大好きなのですよ(笑) 例えに他意はございません。


最後に、「無駄がない」
三つのポイントのうち、一番技術的に難しいと、私が思っているのがこれです。

若いかた向け文庫小説書き下ろし、というのは全体のページ数が制限される仕事です。
なので、無駄なく書かないと、すぐページオーバー。

しかしおもしろいところはできるだけたくさん入れたいので、賢い主婦の家計簿のごとく、無駄なくやりくりする方法をあれこれ考えないと(笑)

要素入れすぎて詳しい説明のページがなくなり、わけわかんなくなっても困るので、どのくらいきっちりと成分と要素が組みあげられるか、私はすごく計算して始めます。
計算せずに書ける方が、本当にうらやましい。

私はついつい多めに材料を用意してしまうので、書いてる途中で、「あ、しまった、これ、要らない」と気づいて削って、つじつまあわせて、という作業をなんどかやります。

何が無駄なのか、思い入れが強く入ってしまうと見極められなくなりがちなので、冷静になるよう、私は心がける努力をしてますけどねぇ、本っっっ当に難しいですわ(苦笑)

そういうときの大事な味方が担当様なのですね。担当様なしでは、完成しません。
これから小説を書こうというかたなら、お友達に読んでもらうといいでしょう。

無駄をなくすには、それぞれの要素・材料・ネタが、すべてどこかで結びついているよう、図を書くといいかもです。
私もさすがに最近は脳内の図だけで間に合うようになってきましたけど、昔はやってましたよ。

あと、「これとこれは、まとめて一つにしちゃってもいいんじゃない?」にいかに早く気がつくか、ですかねえ。
キャラなんか特にそうです。名前と役割を持つキャラ一人増やすだけで、説明がいろいろと必要ですから。

厳選した素材なんだから、一つ出したら最後までちゃんと全部使い切る。
書いた小説に無駄がない、というのは、なんか冷蔵庫の中やりくりしたお料理に似てる気がしますね(笑)

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