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制作秘話 6

《其の六》

今回は文庫本一冊が皆さんのお手元に届くまでの流れをご説明いたします。

まずは企画を立てます。
作者と編集者が雑談などするうちに、こんな感じで行きましょうか、となんとなく会話の中で方向性が見えます。
すると、編集者が「プロットを書いてください」とゴーサインを出します。
で、作者はプロット(キャラ&舞台設定とあらすじ)を書きます。
文庫本換算数ページほどの方が多いようですが、時海のは10ページをあっさりといつも超えてしまいます。
プロットとは、「これだけ決まっていれば作者は本文を書きだせる」というものなので、作家によってかなり違うらしいです。
時海はしっかり枠を決めておかないとだめで、ゴール地点というかラストシーンが決まらないと書きだせません。

そのプロットが編集会議で合格すると、「本文をいつまでに書いてください」という指示がでます。
この時点で一応出版予定があることにはなるのですが、まだまだ本文のでき次第です。
本になりますようにと祈り、いい作品になるよう全力で努力しながら、締め切り日に向けて必死に書くわけです。
本文の分量は、400字詰め原稿用紙で300〜400枚相当です。
「業多姫」壱之帖がほぼ400枚ですね。
時海はパソコンに文庫本の1ページの字組(42字X17行)を3ページ分セットにしたフォーマットを作って、それを1時間で全部埋めるのを目安に執筆しています。
途中で思いついたこととか、伏線にしたことなどは、どんどん手元の紙に手書きでメモするので、執筆した文が全体の半分を過ぎるころには、数枚の紙がモニタとキーボードの間に散乱することになります。

書きあがった本文を編集者が読み、判りにくかったところとか、もうすこし工夫した方が面白くなるところなどを読者代表として作者に伝え、作者はそれに基づいて加筆修正をします。
もちろん、編集者に渡す前に作者は自主的に何回か推敲をしているのですが。
時海の場合、この400枚の本文執筆プラス数回の推敲に3〜4週間かかります。
ライトノベルス業界では普通の執筆スピードだと思います。
推敲方法ですが、時海は文庫本の見開きと同じ字組に組み直した状態の本文をプリントアウトし、赤い水性ボールペンを使って手書きで修正を書きこんでいます。
それをさらに検討しながらパソコンに入力するわけです。

編集者の意見による加筆修正が済み、本にできますよ、と編集部審査に合格すると本文の原稿は入稿になります。
印刷所へ送られるわけです。
データをメールに添付して、一瞬で送れるので楽です。
同時にイラストレータの方へ編集部が作った本文のプリントアウトが、イラスト内容の指示を添えて送られます。指示するのは編集者です。

数週間後、初稿ゲラが著者校正のために現物で送られてきます。
ゲラというのは本のページが見開きペアで、チェックを書きこめるよう少し大きめの紙に印刷されたものです。
原稿用紙に手書きだった時代には、原稿とはどの段階でも現物しかなかったものですが、現在はデータでやりとりされるために「原稿の現物」が宅配便でやってくるのはこのときだけです。
しかも手書きのころは活字の誤植をチェックするという大事な作業だった校正も、今は主に印刷所で打ってくれたルビをチェックする仕事になりました。

……しかし入稿したデータには、あんなに推敲段階でチェックしたにもかかわらず、けっこう変換ミスや誤字脱字があります。
校正係という専門に誤字チェックをする方の指摘がゲラに赤ペンで入っているのを目の当たりにして、「ごめんなさい」と何遍もつぶやきながらそのチェックを追認します。
さらに間違いやミス(描写の矛盾点とか説明の落ちとか)を幾つも発見してしまったりするのです。
それらの訂正も赤ペンで書きこみます。
一冊分の推敲と著者校正で、時海は赤の水性ボールペンのインクを一本終わらせてしまうので、替え芯を買うようになりました。

著者校正が済むと、あとがきの枚数が確定するので、あとがきを書きます。
あとがきの著者校正をすれば作者の仕事はおしまいです。
その間に編集者は再校正(初稿ゲラの校正が正しかったか確認する再稿ゲラの校正)や、目次やカバーのあらすじ、帯のキャッチコピーなどを書きます。
あらすじや人物紹介の文は作者もファックスで受け取ってチェックします。
イラストレータは、カバーイラスト(表紙)、口絵カラーイラスト、本文白黒イラストの順で絵を描きます。
まず下絵をシャープペンで書いてファックスで編集者に送り、チェックを受けて合格したら完成させるという手順だそうです。
こちらも色校正の作業があるらしいのですが、作家にはよくわからない分野です(笑)。

全ての作業が済むと本は出荷され、発売日に書店に並ぶのです。
一冊の本を作るのは、概ね半年がかりの作業になりますね。
企画を思い浮かべてから発売まで。
もっともライトノベルスの場合は、いくつかの作品の違う段階での作業を、同時進行するのが普通なわけですが。
そして、読むときは数時間だったりするのです……。

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