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《其の五十七》

今回は「現代もの」について語ってみたいと思います。

もともと私はファンタジー書きで、とくに和風時代ものが得意というか好きでした。
しかしプロとしては何でも書かないと&書けないと商売やってけません(笑)

なので、プロになってから初めて現代ものを書き始めました。ホントです。


現代ものを書いてみて、ファンタジー=架空の世界や過去の時代と大きく違うなと思った点は二つです。

ひとつは、「説明が要らない」ことです。

ケータイといえば、読者さんは同じようにケータイを思い浮かべ、「学校の教室」といえばだいたい同じ場所を思い浮かべます。
黒板が前にあって机が整然と三十ほど並べられて壁の一面は窓ガラスで窓と反対側の壁の前後に引き戸があってみたいな説明は不要です。

ファンタジーではこうはいきません。
城と書いたらどんな城か、外見内装大きさ素材、詳しく書かないと。
通信装置と書いたら仕組みや形やサイズを書かなきゃ。

なのでファンタジーのリアリティは説明の的確さに表れ、現代ものは単語の多さになります。
ファッション用語、学校生活や日常で気になること、街を歩いてて目に入るもの、じゃんじゃん単語を羅列するのが、現代ものの主人公を取り巻く景色を濃密にします。


もうひとつは「ウソがつきにくい」です。

架空の世界なら、作者しか見たことがないわけですから、いくらでも「見てきたようなウソ」がつけます。

しかし現代ものは、作者よりもそのことに詳しい読者さんがおいでになる可能性が高いです。
私は学校を卒業してだいぶ経ってます。その私が学園ものを書いたら、読む読者さんは多くが現役の学生さんです。

今教科書にはそんなこと書いてないとかから始まって、校則や生徒会の仕組みも変化してるでしょう。
なのでできるだけ最新情報を調べたり、取材に出たりします。

下手な知ったかぶりはできません。怖いです。


ファンタジーは独特の世界観と現代に生きる読者さんの価値観や感覚のずれを、いかにすりあわせるか、というのがポイントになります。

身分違いのために絶対にかなえられない恋とか、現実の日本で生きる学生さんにはまず考えにくいです。
仕える主人の命令で死ななければならない、なんてこともないし。毎日が命がけの戦争状態でもないし。

そういう世界をいかに読者さんに身近に感じさせるか、人としてどの世界でも変わらない価値観や心理は何か、を磨きだしてゆく作業が必要です。

現代現実ものだとその作業がないので、徹底して実際にありそうな「リアル」を描くことになります。
するとやりすぎて「暗くてうんざり」「わざとらしい」となりかねません。読者さんが比較する基準を実体験でお持ちだからです。
そこらのさじ加減が難しいところです。


ということで、ここでふたつの現代ものを発表したわけですが、なかなか緊張しました。
とくにケータイで発表した方は。
自信のある範囲のスキルでどうにかしようと、知識フル回転。

あとついでに言うと、タメ口をどう書こうか、悩みましたね。
文にすると読みやすいというか読みにくいというか、まあ、本だと図書館に置いとけば「すぐ流行り言葉が古くさくなる」という悩みもありますが、今回はケータイなで気にせずいきました。

そんなこんなで、初めての現代もの公開、いかがだったでしょうか。

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