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制作秘話 56

《其の五十六》

キャラが立つ、という言葉がライトノベルやマンガではよく言われます。エンターテインメント小説では広く言われてるかもしれません。

最初にこの言葉を使ったのはマンガ原作者の小池一夫先生だという説をネットで見た記憶がありますが、真偽のほどは私にはわかりません。どなたかご教示いただけますと、幸いです。

キャラが立っている作品はおもしろいとか、人気が出るとか、そういうふうに使われます。その逆にも使われますね、キャラが立ってないからつまらないってふうに。


でも、キャラが立つってどういうかんじなんでしょうね。
いろいろな考えがあると思いますが、あくまでも私が解釈し理解しているイメージとしては。

「どんな状況でも一貫して、このキャラはこういう方向で言動する」と固定されていることだと思います。
キャラが揺るがない。

実際に生きて存在している人のごとく、作者が無理矢理操り人形としてあちこち操作しなくても、自由に行動してくれて、それでいてズレがない。
しょっちゅう別人に見えちゃうようなことはしない。

けっして、一風変わった語尾でしゃべるとか大げさでユニークな行動をするとか、ということではないのでは、と思うんです。


性格的に立っている、というのがまず原則ですよね。行動力があって熱血で考えるよりも先に走り出していて脊髄反射の速さで喜怒哀楽をする。
それとは逆に冷静でいつもよく考えてから行動し、感情を表に出さないというキャラもいます。

ひとつの作品の中では「かぶらない」よう、キャラがみんな違う性格になっていたほうが、読者にわかりやすいですし、話のテンポもよくなります。

言葉遣いも固定されてなければなりませんし、好き嫌いというか好みや苦手な物もキャラ立ちのひとつです。

ドラえもんの好き嫌いと言えば?

そう、ご存じの通り、ネズミが嫌いでどら焼きが大好き。
これは一度読んだみんなが印象深く憶えていて、ストーリーのきっかけに使ったりギャグにできたりするのですから、立派なキャラの特徴付けであり、キャラ立ちといえると思います。

それだけではなく、服装や髪型や髪と目の色も、特徴付けや外見の第一印象を決めるのですから、キャラ立ちの一部と見なされます。
ファンタジーなら持っている武器もその範囲でしょう。

しかしこれらはまず、性格の揺るがなさがあって、それに付随するものだと私は考えています。


キャラが立つ=キャラの性格が揺るがないためには、どうしたらいいのか。

私もいつも考えている問題でして、かなり難しいです。
これをつかむのにいつも時間がかかります。キャラの性格のみならず、外見とか過去とか趣味とかバランスよく配置して……そこまでは「作っている」作業です。

この作り物に「自由に動ける命」を吹きこめたとき、「キャラが立つ」んです、私の場合。
まず脳内でシミュレーションして、実際に書きだしてからもひどいと半分まで書かないと命が生まれず「キャラがつかめなかった」り。

新作の度、「あ、今回は3割書いたところでつかめた、早いな」とか、「全然こいつだけキャラが立ってこない。周りに振り回されて流されているだけ、どうしよう」とか、一喜一憂してます。

たいていひとりくらい、なかなかキャラが立たなくて手を焼くやつがいるんですよ。

ぐずぐずしてばかりで見てていらつくか、いてもいなくても同じな「空気」になっちゃうか、こういうほうへ立ってほしいのに全然言うことを聞かないか、どちらかですけれど。

前者二つなら本当に必要なキャラのか考え、場合によっては削りますし、後者ならときにはあきらめてキャラの奔放さに任せてしまいます。

しかし主役級がぐずぐずしていて煮え切らないと、削るわけにもいかず、もう泣きたくなりますね。なので慎重に主役の性格は決めるようにしてます、

どうしようもないときは、既存の他人様の作品のキャラを2〜3人思い浮かべ、それを足して2で割ったような、とかやって基準線を作り、それへ近づいていけるようにイメージしますね。


完全にキャラが立って、作者の中で生きていると、もう、楽しくてしかたがないです。

会ったことはないけれど、遠くから行動をいつも眺めていて、こちらから声はかけられないけどよく知っている友人……片思いの彼みたいなかんじです。
ああ、あいつならこう言うよね、こうするよね、とそのキャラについてつい語ってしまう。実在の人のように。

そして、物語の中でも自由に動き、思いがけないことを言ったりやったりしてくれます。
私が考えてるんじゃない、キャラが勝手にやってるんだ、私だってびっくりだよ、というかんじ。

それが楽しくて、小説書くのがやめられないんですよね。

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