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制作秘話 52

《其の五十二》

プロットに引き続き、本ができるまでの専門用語シリーズ? なのかな、今回はゲラについてです。
ゲラはgalleyと綴るのだそうですが、語源はガレー船らしいですね。

ガレー船(あるいはガリー船)は古代ローマから中世まで、地中海で軍用に使われた、奴隷が大勢でこぐ船です。
船の下層からいっぱいオールがつきだしていて、大勢でオールをこぐわけですよ。

昔は活版印刷といって、活字を集めてページサイズの箱に詰めこんで「版」をつくったので、そのすし詰め状態がガレー船のこぎ手を連想させて、箱がgalleyと呼ばれるようになったらしいです。
活版印刷は確かドイツで発明されたんですよね。

それが明治時代に日本へ入り、なまって「ゲラ」になったとか。
ということで、今ではパソコンで「版」を作る時代ですが、ゲラという言葉は生きています。


ゲラが現在いったい何を指すかというと、「校正刷」のことです。つまり、作った「版」の試し刷りですね。
「版」の字に間違いがないか、チェックするための刷りだし(プリント)で、基本は2ページで1枚です。

できあがる本と同じ状態ですが、切りそろえるサイズの確認のラインがあったり、いろいろ書き込むために紙は一回り大きく、紙をクリップで束ねただけで本の形にはなっていません。

それを、校閲さんとか校正係さんと呼ばれる専門職のかたと、担当編集者さんと、著者の三人が一生懸命読んで、間違い(誤字脱字・文法のミス・言葉の使い間違い・ある字を漢字かひらがなにするかの統一)や、語順や改行や文章のおかしな所を直すわけです。

これを校正作業といいます。
赤鉛筆や赤いペン握って、間違いを書き直すんですね。青鉛筆で指示を書いたり、ふりがなを振ったり、著者への質問は普通の鉛筆で書き込んだり。
印刷された字に指示が埋もれないように、そういった色の違うペンを使います。


著者が校正することを特に著者校(著者校正)といいます。明らかな誤字などの間違い以外に、書いた内容を変えられるのは、著者だけです。
あんまり勝手にたくさん変えると、「版」の組み直しが大変なので、編集さんと連絡を取って相談しつつやります。

著者校のためのゲラが届くと、けっこう緊張します。原稿はデータですからバックアップしてあるけれど、紙への印刷物であるゲラは現物しかないですから、無くしたり、破損できません。

ゲラの校正は3回やることが多いです。初校・再校・三校(あるいは念校)。初校で直したところがちゃんと直っているか、初校で見落としたことはないか、見るのが再校ですね。
これでOKとなるのを校了と言います。こうして完成した版で最初に印刷した本が「初版」なのです。

校正で編集さんと校閲さんに御迷惑をおかけしないためには、著者が間違いの少ない原稿データを書くことこそ大切なのです。と偉そうに書いている私は、いつも多大な御迷惑をおかけしておりますホントにすみません。


次回の更新は「メガネ恋。」発売日になります。時海初の「近代欧風ファンタジー」の世界観などについてです。

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