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制作秘話 44

《其の四十四》

源氏物語最後の難関、「出家願望」について解説を試みたいと思います。

平安貴族たちが、現世よりも来世に夢を見いだしたのは、けっきょく、現実の閉塞感からだというのが、よく言われる説です。
つまり生まれついての身分で、出世も暮らし向きも何もかも決まってしまう。努力なんて無駄、な社会。

この中で、最高の身分に恵まれたはずの殿上人でさえ、ちっぽけな血筋とか家柄のちょっとした違いにうんざりしていたのですね。
だって、どうやっても、変えようがないのですから、自分の力では。
差がちっぽけなだけに、狭い狭い宮中でどこにも逃げようがない人間関係、いやんなったんでしょうね。

食べるものにも着るものにも困らないけど、失敗はできない人間関係の気遣いが窮屈な、自由に「人と違うこと」はできない社会。
学校のクラスで人間関係に疲れて、卒業すれば、という未来を夢見て我慢するように、といえば、もしかしたら少しはうなずいてくださるかたもおいででしょうか。

彼らの心の安定を支えていたのが、いつか必ずゆく死後の世界というわけです。
極楽浄土、そこには悩みがないのです。苦しみもない、安らかなところです。

といっても、生きているときに悩みがありすぎたり、罪を犯した人は、極楽浄土へゆけません。
もっともっと苦しい地獄ゆきです。
選択肢はどっちか一つ、死んだ直後に一度決まったら、変更はききません。

だから彼ら貴族は、悩み過ぎるとそれから逃れるために、出家を望みました。
社会とのつながりを裁ち切り、悩みをなくして、毎日仏典の指示に従って清く正しく生活し、仏様にお祈りして、極楽への切符を手に入れようとしたのです。

お金のある貴族は、極楽浄土の仏様から気に入られて死ぬときにはお迎えに来てもらおうと、いろいろなことをしました。
お寺への寄付、お寺を建てる、仏像を作る、当時は貴重だった綺麗な紙にお経を書いて奉納、などです。

源氏物語の登場人物も、多くが出家を望みます。
特に女性は、出家をすると「心の背丈がすっと伸びる」、自分自身といいますか、自由な心を取り戻してゆくようだと、現代語訳をされた(尼僧様でもあられる)瀬戸内寂聴先生が書かれていらっしゃるのを、資料で拝読した記憶が、思い出されます。。

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