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制作秘話 41

《其の四十一》

ブラッシュアップの話です。ええと、一般的には推敲といいます。
昔の中国である人が詩を作っていて、門を「推す」か「敲く」かどっちにするか悩んだ、というエピソードからきてます。
つまり作品をよりよくするために、書き上げた原稿のあちこちを直すことですね。

推敲は作家さんによっていろいろとやり方が違います。とにかく全部書いてしまってから一気に見直すかた、少しずつ戻っては直しして、最終的には完成度の高い書き上げでゴールするかた。

私は半分直し。半分まで書いたら、いったん最初から読み直して直します。そして後半に書かないとならないことを書き出して、先へ進みます。
ここが半分、というのが他人にも自分にも割とわかりやすいんですよ。くせなのか、真ん中にけっこう明確なラブシーンがあるんです。あ、児童書は静かで真情を吐露するようなシーンかな。

で何を直すかというと。
シリーズはじめの時はまだキャラの口調や行動がぶれてるので、それを統一します。シリーズが進めばレギュラーキャラにぶれはなくなりますが。
書き進んだら、思いがけない言動をキャラが取り、プロットになくても使えると判断したとき、戻って伏線を入れます。

緩急を整えます。勢いのあるシーンと、静かなシーン、これのバランスですね。偏ると読みにくいですから。全部一定のテンポや雰囲気でもたいくつです。バランス悪いなと思ったら数行足したり削ったり。
言葉足らずを補います。勢いで書いてしまうと、説明不足があちこちに出てしまいます。
余計な部分を削ります。これ伏線のつもりだったけど、いらないな、とか。シーンやエピソード、ときにはキャラ一人まるまる削ることも。


私の場合、さらに全部書きあげてからやるのが、漢字のひらきの統一です。ひらき、とは難しい漢字をひらがなで書くことです。
児童書とライトノベルでは、漢字で書くかひらがなで書くかがずいぶん違っていて、チェックしないとも同じ言葉なのに漢字のままとひらがなにひらいたのがごちゃまぜになってしまってます、私の変換キーの押し損ないで。

校閲さんや校正係さんがチェックしてくださいますが、あんまりひどいと恥ずかしいので、時間の許す限り自主訂正。
置換機能フル活用ですね。児童書はシリーズごとに「主な漢字ひらき表」が作ってあります。一般文芸だけとか、ラノベだけとかのかたはたぶんこれはなさらないと思います。
当然誤字脱字変換ミスも自主訂正です。

そしてこれが一番最後の最後まで何度も直すのですが、単純な日本語文法の修正です。てにをはを変える、一文の語順を入れ替える、長い一行を二行に分ける、語尾がリズミカルになるようにする、改行の位置を変える。
いかに読みやすくするか、でして、内容に変化はありません。直さなくても意味は通じると思います。でも、読みにくいと気持ち悪いので、しつこくしつこく直します。

推敲というのは、内容に関する直しまでを指すような気もしますが。こっちの作業で真っ赤になりますね、原稿。内容直しと同時進行は頭がこんがらがるので、内容の直しがほぼ済んでから、この事務作業をちまちまと改めてします。


ここでお話ししたいのは、どこが読みにくいが自分で判断できる客観的な目をもてるように日々訓練、ということでしょうか。
書き上げたときはけっこうおもしろいと思っても、数日して読み直すと、いろいろ気に入らなかったり読みにくかったり。
で、落ち込みます……ここで落ち込まず、なるべく短い時間で頭の中をディレートして、客観的にかつ事務的に担当さんの気持ちになって自分の原稿が読めるか、が作家の条件のひとつではないかと。

もう一つ条件を挙げるなら、見切りをつけられること。決められた時間の中で、瞬時に修正が必要か必要ならどうするかを一語一語に判断し、赤を入れる判断力。
それといつまでも原稿をだらだらいじくり回して、いじり壊さない見極めとあきらめの良さ。

作者にとって完璧な完成品というのはまずなくて、いつもあそこはやっぱああ書いたらよかったかなあ、なんて思いながら、できた本を眺めるわけですが(苦笑)

原稿がまず最後までいったん書き上げられる、というのは、作家としては当たり前の話にしかならないので、いかにこのブラッシュアップを的確に効率よくやるか、が勝負ではないかと思うんです。
もちろん、担当さんもアドバイスをくださいますが、提出するまでに自分で、より何ができるか。
そのうえで、数回の担当さんの修正の指示に応えないとならないわけですね。

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