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制作秘話 37

《其の三十七》

今回は、3巻までの時海の女性キャラ設定覚え書きを公開しましょう。
ネタばれ気味なのでご注意。

キャラはもちろん原則、大和先生の描かれたキャラ設定に添って、輪郭をはっきりさせています。そして、そもそも紫式部の考えたキャラ設定が、「あさきゆめみし」の基本になっているのですね。


藤壺の宮
義理と人情の板挟みタイプ。自分の本音と建て前の見極めが悪く、迷いと揺れを大きめに設定。
義理を立てすぎるきらいがあり、自分自身がどうしたいかの判断が遅れがち。しかし義理を立てるその真意は自己防衛、本当は自分がかわいい、甘くてずるい女なのに、不幸にも自覚が全然ないんです。自分を悲劇にヒロインへ置いてしまって満足するだろうなあってイメージ。

こんな女性、身近にわりといますよねw。ライトノベルでは、少女系によく見かけるでしょうか。パターンとしては、同性友人関係をこじらせちゃうかんじの立ち位置です。


紫の上
正当派明るくまっすぐな妹属性。「おにいさま」ひとすじっ娘。
でも自分が幸せだったのかどうか、最後の最後で疑問を持っちゃった、それでも彼のために彼から騙されていようと思った優しく賢い人。少年系の理想ヒロイン。

子どもがいないために、ずっと心が若々しいまま、おばさんにならず少女を保ったのでは? 本当は活発で自分の考えを持った、頭の回転と心配りの優れた……優しすぎる人で、光源氏も人生後半この人に甘えて、依存気味。


葵の上
日本小説史上元祖であろうツンデレお嬢さま(笑)。親同士が決めた婚約者というプレミアつきで、解りやすいツンデレ。すぐ死んじゃうけど、このキャラの壮絶な孤独に誰よりも早くから気がついて片想いするまじめ男がいたら、展開面白かったかも(笑)。

死ななければ&紫の上を源氏が見つけなければ、あのデレは年齢とともに和解していい奥様になったはずなので、そこが切ないキャラ。ツンっぷりがきついので、読者の同情という点では死んで得しています。孤独さを強調するかんじで印象を和らげる方向へ。


六条御息所
ハードおねえさま。融通きかない性格で、遊びが遊びでなくなってしまった、初めて積極的な恋をいい年になってから知ってしまって、過去と比較できるが故にはまる、というタイプ。若い頃に失敗や挫折があまり無かったようで、完璧主義でプライドが高くて、表現がへた。

周囲までそう認識しているから、よけいに逃げ場がなくて悪循環。怖い人、というよりもどうしようもなくなっちゃった哀れな人ですね。こういう「おねえさま」ならキャラの脇が甘くなく、懐に余裕がないと、悲劇になるだけでしょう。少年系では出すのが難しいキャラ。

若かった光源氏にとっては、いろいろ「いいこと」を教えてくれたおねえさま。でもちょっと気が休まらないてか気を遣うので、源氏はこの人というより、恋愛行動そのものに熱を上げていたのでしょう。彼に悪気がないだけに、結果が傷ましいです。


夕顔
はかなげキャラ。なんか、あきらめちゃったかんじのあるところに魅かれちゃうって、源氏も若いからでしょうね。だから、きっと死ななかったら、長続きしなかったと思います。

悲しい人で、源氏と出逢ったときにはもう終わった抜け殻というか残滓で、既に死に神に魅入られていた人。上手く書けば、印象深くて人気の出るところだし、実際千年の間そうなっているキャラ。
ほんとは、頭中将だけが好きだったのかもしれない、って紫式部裏設定に一票w。シリアスな少年系の脇役にいそうなかんじ。


朧月夜
小悪魔気取った、強気お嬢キャラ。でも本当はとってもピュアで世間知らず、お育ちの良さが、強気に嫌みを感じさせない。自分の意志の強い人という印象を強めに(源氏と朱雀帝兄弟の間で揺れる意志の弱いキャラ、というのが原作での見方)。

三角関係を源氏・朱雀帝とこしらえて、でもそれを帝に納得させちゃう魅力があるし、三角関係の悩みさえもつまりは味つけだったと、のりこえた後には考えられる、ただ気が強いだけではない「かっこいい女」に育てていきたいですね。


明石の君
優等生。まちがいなく委員長キャラ。現代ならメガネっ娘でドジ属性はなし(笑)。でもメガネの容姿にひそかなコンプレックスがあるってイメージで、地方生まれにコンプレックス。しかし、登場する女性たちの中で、一番に少女の時から自分を客観的に見極められていました。

自分の能力を試したいと思ってコンプレックスと戦うかんじ。この客観さのおかげで最終的にそれなりの幸せを見事確保、大人として母として、きちんとまともに生きられたキャラ。本作では、藤壺の宮・紫の上とバランスを取って、比較できるキャラとして描いてゆくこと。最初まじめな少女らしいかわいらしさの魅力もほしいところ。
比較のために描かれる……脇役代表でヒロインになりにくいタイプ。

  
男性キャラも立ってます。主人公の親友で性格が陽性、主人公とはキャラの立ち方が逆という、確実に一定のファンを取れる美味しい位置の頭中将や、あまりにも、へたれで「いい人。」な朱雀帝(マザコンでなさけないところをどうにかフォローしてあげたい)、一言多い突っ込みが得意で明るく愉快な惟光。

4巻以降にも、個性の確立したキャラがいて、どれもかぶらないのがすごい、それが「源氏物語」です。キャラ小説の原型なのですね、心理描写小説の元祖であると同時に。

そして主人公光源氏は「めんどくさい」系です、少女向け主人公設定で分析するなら。うじうじ悩んで煮え切らない「行動第一熱血とは逆に、頭でっかちで物事めんどくさい方向へ捏ねてしまう」なのですが、本作では一応かっこいい側になるっぽいかんじで努力。 
 

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