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制作秘話 35

《其の三十五》

サイトでも既刊のあとがきでも、どこにも書いていなかった、とつい先日気がついて、愕然としてしまったのですが。
「数え年」と「旧暦」の話です。

正確には、「あさきゆめみし1」のあとがきでは一言だけ触れてますけど、説明はしてませんし。
絶対どこかで書いていると思ったのに、勘違いだったようです。もしかしたら、旧サイトの近況報告とか、移植していないところだったのかも。

なんかねえ、業多姫の「いろどりつづり」の第六話で、初日の出拝んで年齢が一つ増えるって、書いたんですよ。そのときにどこかで説明した気になっていたんですが。

ということで、今回は「数え年」と「旧暦」について、説明します。
古文はもちろん、時代小説を読む上&書く上で、絶対に必要不可欠な知識です。作中に採用するかどうかは、また別の問題ですけどね。


まずは「数え年」ですね。
生まれたときが一歳、あとは元旦ごとに一歳ずつ歳を取ります。
私のようにお正月の範囲に生まれれば、実年齢に一歳足すだけですが、12月生まれだと二歳足すことになります。
「早生まれ」「遅生まれ」というのはここから来ているのであって、1〜3月生まれの学年が一年上、という意味の「早生まれ」ではありません。

古文で「何歳」と書いてあるのは、すべてこの「数え年」です。
光源氏は春生まれに設定しましたから、冬の間は、書いてある年齢から二歳、あとの季節は一歳をマイナスしたのが、実年齢です。

十二歳での元服は、現在なら小学校5年生の5月だった、十一歳になったばかりだったのです。作中では、もうすこし大人びたイメージにしておきましたけれど。
実際、昔の人は、ずっと精神的に大人びていましたようですしね。なかなか長生きできなかったから、しっかり生きるしかなかったのでしょうね。
一日一日が、いまのわたしたちより、ずっと貴重で充実していたのではないでしょうか。


旧暦は、太陰暦ともいい、カレンダーにいまだ書いてあるものもありますね。閏月の存在(19年間に7回)はわりともう、忘れられたかもしれませんが。
地球は太陽の周りをだいたい365と四分の一日で一周します。これが太陽暦の一年ですね。

月は地球の周りを29日くらいで一周するため、十二周に必要なのは約354日、一年で約11日、3年でほぼ一か月分、ずれてしまいます。これを埋めるのが、閏月です。

太陽暦から、太陰暦は一か月前後、日付が遅れています。明治の初めに太陽暦に切り替えたとき、一か月近く節約して、国家公務員の月給を一回分ごまかしたから、という説が有力だそうです。


その年によって、旧暦と現代のカレンダーとのズレ具合はいろいろですが、私はいつも、作中の季節感を、ほぼ一ヶ月から5週間、後ろへずらして考え、イメージしています。
元旦が、現在の立春ごろ、というのが基準です。

業多姫は、旧暦の如月の晦日=2月の最終日にはじまって終わる、ちょうど1年間の物語ですが、2月の最終日を、4月の入学式頃、4月の5日前後くらいにイメージしました。
土地によって、桜が咲いたりまだ雪があったり、ですよね。美駒は寒い土地なので、まだ花が咲いていません。

二人が出会った皐月の一日は、梅雨入り直前の最後の晴れ間、6月5日ごろのイメージです。というか、調べたら1520年の旧暦5月1日が6月5日だったので、そこから全ての日付とキャラの年齢、生年を計算しました。

そうそう、鳴は遅生まれですから、書かれている年齢より、三巻までは二歳引いてください。
つまり彼女は、現在の中学三年生なんです。颯音はそれより一歳半くらい年上、学年で一つ上というイメージです。


中国は旧正月こそお正月だし、韓国ではまだ数え年が通じる、ときいたことがあります。
日本でも昭和十年代まで、まだまだ自分の年齢を聞かれたら、数え年を答えるのが普通でした。
満年齢は「学齢」とか「徴兵年齢」とか呼んでいたようです。役所の書類と事務は満年齢ですからね。
しかし今、七五三はまだすこし数え年気味にしても、死んだときの享年も満年齢になった日本、数え年は滅ぶのでしょうか。

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