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制作秘話 29

《其の二十九》

陰月のヤジリの、ネタばれというほどでもないような裏話です。

今回は、ここに書くようなことを、あとがきに書いてしまったので。
だから、あとがきに書くようなことを、ここに書きたいと思います。

この物語は、川の流れのように書いてゆく小説というより、舞台演劇とか漫画とか、そんなイメージで場面場面をワンシーンずつ切り取るような描き方をしてみたかったのです。
人数も舞台移動も最小限、しかも視点を持たない人物がいます。視点を持たない、内面描写をされない、台詞と行動ですべてを表すキャラが、陰の主役として浮き出してくる、というのを狙いたくて。

原型となった50枚があったとはいえ、それの一部分を加筆修正程度で使ったのは、最初と最後だけ。
だからほとんど書きおろしたことになります、構成・設定もあちこち変えたし。人数が少ないため、枚数的には、コンパクトになりました。


ときどきふっと、こんなことをしてみたい、と思うんですよね。この素材は、こういう形・構成で書けば、一番活かせるんじゃないかな、とか。
たとえば、「どう考えても、これは青年漫画誌の原作向き」といったアイディアもあります。古びてしまわないうちに、チャンスがないか、といつも胸の奥で温め続けているもの。
「これは大人も子どもも楽しめる、ビジュアル絵本だよな」「総合学習の時間に調べものをする本とか、その発展で、学習漫画の原作にいいのでは」というのもあります。
いろいろな本がつくりたい、書きたい、そんな思いがありすぎて、いろんなチャンスを捜している最中ですね。

小説でも、いくつかしてみたいことがあり、幸い来年にはその中のいくつかが、発表できるかもしれません。
あとがきにも書いたのですが、「日本史の枠を越えた物語」を書く……歴史恋愛ものは「あさきゆめみし(源氏物語)」の中の私のオリジナル表現に集中させるとして、しばらく、「作家としてのひきだし」を増やし、広げる修行をしていきたいと思います。
いままでは、歴史の面白さを伝えたい、という思いで小説による表現を選択していたのですが、さらにつたえるためには、小説書きとしての力をつけてゆかなければならないと、考えまして。


あとがきでの宣言通り、裏話も書かないと。っても、以前から引き続いての読者さん向きな裏話ですが、すみません。
どんな作家にも「ワールド」というのがあると思うんです。時海のワールドは「美駒=ミコモ」ですね。ここが物語の中心地。
したがって、この「陰月」の物語も、同じワールドに所属します。「コウヤ」が所属するのと同じに(小学生向け「物語のひみつ」の方もあわせてご覧下さい)。

玉響で登場したあのマユラを苦しめる性格の悪い(笑)女神が、どうして生まれたのか……その理由として、当初考えられたのが、原型となった50枚でした。
そこからいろいろ設定替えをしたりして、こういう物語におちついたのですが。なので、サナの故郷の名前も、サ・ナという文字の名をあえてつけたわけも、作中に触れた箇所はなくても、お読みになったかたに心の中で、なるほどね、と思っていただけたら、大変うれしゅうございます。

この「美駒ワールド」にはあとすくなくても、ふたつかみっつの、歴史の流れを繋ぐストーリーが存在します。そのうちひとつは、原稿の形になっているのですが…………はたして、世に出るかは、私にも不明なのです。もちろん努力はしますが、本は私独りで出せるものではないですし。

今後しばらくは、この「ワールド」を離れて、武者修行したいと思っています。新しい物語にも、おつきあいいただけますと、本当に心からうれしく光栄に存じます。
どこまでいってもラブなのだけは、ホント変わらないので(笑)。

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