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制作秘話 27

《其の二十七》

よく「本一冊の原稿はどのくらいかかって書きますか?」と尋ねられます。
読者の方にも、初めてお会いする編集者の方にも、知り合ったばかりの同業者の方にも。
これって執筆のどこからどこの部分を指すのかな、と疑問に思うので、とりあえず「草稿で、一冊分の文字を書くのには、300pの文庫を3週間」と答えます。
これだけだと、「速いですね」という反応が、特に読者の方からは、多いです。実際は、ライトノベルでは平均的なスピードかなと思いますが。

しかし、結果として私はそんなに速筆ではないと思うので、執筆期間には余裕をなるべくもらえないか、担当さまと交渉するほうです。資料の読み込みと下調べに納得するまで時間をかけたいんです。
そういう作業の必要なタイプのストーリーを書くから、私もいけないんですけれどね(笑)
草稿を書きながら、物語世界を構築していく方もおられます。こういう方の中には、文字をゆっくり書きためる方もおいでででしょう。
私は、事前に世界を組み上げて、プロット(世界観・人物設定・舞台設定・あらすじ・キャラの思惑と行動のタイムテーブルを書いたもので、物語の設計図)もすごく細かく作って、一気に、一心不乱に草稿を書くタイプです。

さらに、私は推敲に時間がかかる方です。誤字脱字変換ミスが多い、さりげなくつじつまが合わないところがある、必要な説明を入れ忘れた、くどいところを削らなきゃ、ここはもっと気持ちを盛り上げて、というかんじ。
プロットの段階で計算違いなところがあって、キャラが余分だったりすると、けっこう一人で大騒ぎして削ったり。 
ただ、プロットがないと書けないタイプなので、大きくそこから外れてしまうことはないですね。プロットがつまらないと、もう取り返しがつかず、ダメと言うことでもあります(苦笑)

そういうことで、例えば実際に、パソコンで手書きの文書を清書してみたりするとわかるのですが、文字を書くというのは、そんなに驚くほど時間がかかる作業ではありません。1時間に1000字はいけます。
富士見ミステリー文庫は1p42字X17行で、まあ改行で7割くらいに文字があるとして、およそ500字。 見開きで1000字、書くのに1時間ですね。
300p本文があると、150時間です。一日8時間労働すれば、20日あれば充分書けます。私もその程度のスピードです。

しかし、資料を読みつつプロットを脳内で組んで、それを書き出して検討し、草稿を書いたら推敲を何回かして、担当さまへ渡す。担当さまから直しの指示が必ずありますから、それをまた直す。これがまた2回か3回か。
一冊書く全ての執筆期間に、やはり3週間の3倍くらいかかったりします。すると年に書ける本は4〜5冊。担当さまが読んでお返事を下さるのにちょっと時間がかかるから、その期間でほかの原稿を重ねて作業することで、もう少し増やせるかな、というかんじ。

これ以上に刊行を増やすには、労働時間を増やすか、執筆時間を短くするか、しかないですね。たいていのライトノベルシリーズが、作者一人につき年に4冊前後の刊行なのは、こういう事情であり、これよりもたくさん書かれてらっしゃる方は、体がタフで、執筆速度の才能に恵まれ、その上にペースを維持する努力をなさってらっしゃるのですね。すぐ「さぼりやさん」をしたくなる私は、その努力を尊敬しています。
 
そして、プロ小説家を目指す皆さま、執筆ペースの調整の参考として、ご検討要素にお加えいただきますと、こんな駄文ではありますが、幸いに存じます。

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