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制作秘話 25

《其の二十五》

玉響三のネタばれがあります。
未読のかた、ご注意をお願いいたします。

言霊(ことだま)のお話をしてみようかな、と。
まずは、見えているこの辺では、ネタがばれてないことを書きましょう。
今、方言ブームだそうですね。
仲間内だけに通じる言葉、として連帯感とか共有感とかを確かめる、ひとつの手段。
ギャル文字とかもそうだと思うし、その商売でしか通じない符丁・業界用語っても、そうなんですが。
仲間の結びつきの力を、見えない柄らを護っているのが、仲間内だけに通じる言葉です。

方言も生活圏で使われる、仲間意識の言葉であり、話せない人は「よそもの(否定的な意味ではなく)」として区別されます。
方言には、流行語をぽつんぽつんと残している、という特性があります。何百年も前の、都の流行語を。
その流行語をもたらしたのこそ、「よそもの」旅人」なのですね。彼らを受け容れた証しに、彼らの使う都の最新の流行語が残る。
新しい言葉には、新しい力があるのです。「なんかその表現、ぴったりだよね、この新しい現象に」と思ったときに、その言葉は命を得て人々の間に広がるのですね。
広がる勢いが、「生命力がある」と感じられ、使いたくなるわけです。

玉響では、「禁じられた伝説」というのが、特定のシチュエーションで語られます。起こってはいけないできごとについて、具体的に語るのが「禁じられた伝説」です。
特定の身分に属し、護り玉を持っていれば、その話を聞く機会があるし、聞いて受け容れられる、そのことによって体に不具合が生じたりしない人がいる、マユラのような。

一般の人が、たまたまその話を聞く羽目になったとき、玉響三のワンシーンのように、特定の姿勢をしたり、呪文を唱えたりしなくては、言葉の力にやられるというわけです。
言葉が発せられ、人や神に聞かれたことによって、具現化する、というのが、日本の言霊です。裏を返せば、起こって欲しくないことは、言わなければいいのです。言わなければ、起こりません。
そんなこと、実際はないんですけれどねぇ(笑)人知を離れた現象が起こるのは、言葉の有無とは無関係です。人知をの範囲で起こる現象をコントロールするのは、人の行動です。行動が伴われるような言葉です。

それはともかく。
アリネがほんとうの目的や持つ能力とは別に、自由に旅をして、行く先々で尊敬されるのは、彼が人よりも多くのよその土地の言葉=情報を持っていて、それを聞かせ、分け与えているからなのです。
こうしてインターネットで、あふれる情報を自由に受けとれる私たちには、ちょっと信じがたいのですが、ほんの100年前ほどまでは、生まれたこの土地以外のよその土地をいくつも見てきたことがある、というだけでご近所から尊敬される人が、どこの集落にもいたのです。
よその土地だけで通じる言葉を知っているとなると、それはもう、大変な呪文を知っていることになります。
よその土地の持つ力、よその人の仲間を結びつけている力、を引き寄せられることになるのですから。

具体的に例えばそれは、新しい農業技術の情報だったりするわけです。
「あっちの山の向こうの人は、おらたちの知らない『米』ってたべものを作ってる」とします。作り方を知るのに、言葉がわからなければ、半年は現地でずっと作業を観察しないとならない。
しかし、言葉が介在すれば、「こういう時期にこういう作業をして」と一晩で伝えられるわけです。

あたりまえじゃん、と思うかも知れませんが、古代の人々にとっては、それがすごいことだったのです。あっちの土地の神や精霊の力と、あっちの土地の人たちの結びつきの力でできるたべもの「米」を、言葉の説明を聞いただけでこっちの土地でもつくれる、ということはあっちの土地の力を分けてもらってきたことになる、と考えるのです。
それがパターン化し、より力があるという形に整えられたのが、呪文、ということになります。召喚呪文とか回復呪文とか。
現代ならそれはさしづめ、外国語学習と言うことになりますかね。
  
その「説明の言葉」、情報を分け与える「旅人」のもたらした力を、土地に根づかせるための形代(かたしろ)として、記念樹が植えられたり、祠がまつられたり。
地方にお住まいのかたでしたら、「弘法大師が○○した」とか「日蓮上人が」「坂上田村麻呂が」「親鸞上人が」、あるいは「武将の姫君がなくなった」「平家の落人が通りがかって追われた」という由来を持つ場所が、お近くにございませんか?
それは、ほんとうにその歴史上の有名人が来た、というよりも、ある旅人の、ときには複数の旅人の痕跡なのです。

そして若い男の旅人には、子種を授けてもらう、という方法も古代にはあります、ぐはぁ。日本に限らず。
結婚が土地の人の間だけでは、いわゆる「血が濃くなる」遺伝子が劣性保存になっていきますから、「新しい血を入れる」には生物学的にも意味があるわけですよね。
ハニカの一族やトゥミは、そういう生まれなのです。

言霊からなんとなく話がずれてしまいました(笑)

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