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制作秘話 20

《其の二十》

今回はキャラの名前の由来と意味についてです。
名前は最も短い呪(しゅ・呪文)、とは「少年陰陽師」(著:結城光流先生 角川ビーンズ文庫)でおなじみの台詞です。名前にはその人の魂を縛り、意味づける力があります。

マユラ(真揺)とイメタテ(射目立)の意味は二巻本文で説明したのですが、他のキャラを本文で説明することは今後たぶんないだろうなと思うので、ここで。 
カタカナ表記なのは「呼び名」です。本当の名前「真名」は漢字にカタカナルビで表されまして、扱いや意味は本文で説明しました。
「呼び名」も人物紹介ページと初出のときだけ、漢字を紹介。漢字がまだ伝わっていない時代というのを読者の方に実感してほしくて、こんなややこしいことをしています。

当時は文字がないのですから、記録もありません。フルコト(古事)……神話や伝説や歴史は全て、口承文芸つまり「語り」だったのですね。記憶の中にのみ存在するから、なるべく多くの人で共有する。
そうした共通記憶が過去の存在を事実にしているのです。
記憶を引き出すきっかけとしての記号や絵画表現はあっても、それで全てを表さないのです。優先されるのは記憶です。

共通記憶を事実とするなら、たったいま一人きりで体験したばかりの個人的なできごとは事実かどうか、証明できないわけです。するにはみんなに記憶してもらうしかない。
というか逆に、夢と現実とその人個人でしか記憶していないことに区別がない場合も多いのです。夢も事実なんです、個人的には。夢での架空体験がその人にとっての事実として、他人からも尊重されるんですね。

映画「マトリックス」を見ていて、私はなぜかそんなこと(文化人類学用語で「ドリーミング」)を思い返していました。

ああ、話がいきなりずれたです。
では、意味を説明しますね。ちなみに単語は「風土記」や「延喜式」辺りから寄せ集めています。

なお、時海ルールとして、同じ母親から生まれた子どもは頭文字を母親と同じにしています。つまりマユラとマコリの母は「マ」がつく名前だったのですね。これは呼び名真名ともそうです。マユラの真名には「美」がつくわけです。
なのでいま三度目の呼び名であるイメタテの場合は、最初と二度目の呼び名(アラキサ)には「ア」がつき、母も「ア」がついたはずです。
このルールは日本では確立していませんが、民族によってはしりとりだったり頭文字だったりして、確立していることがあります。

トゥミ(跡見)
狩りのリーダーを表すイメタテとペアになる単語で、リーダーの補佐役であり、先頭に立って偵察をする役です。「跡」とは獲物の足跡のことです。足跡を捜して獲物を見つけるという意味です。
この呼び名も二度目のもので、母の頭文字一文字だけで赤ちゃんの時は呼ばれていました。赤ちゃんの頃はまともな名前じゃなかった、とはそういうことです。

ヒナクモ(日奈雲)
雲間からのぞいた陽射しという意味です。もうひとつ「鄙隈」という漢字も当てられます。人が住むところから遠く離れているという意味です。これは旅をする者が、そういう場所の神さまに意地悪されることなく迎えてもらって旅が安全にできるようにと祈りの込められた名前です。

ハニカ(埴瓶)
水を入れたり貯蔵用の土器という、端女の呼び名です。これはマユラに助けられる以前からついていた名前ですが、かなり差別的な身分を低く縛りつける、まじないっぽい呼び名です。真名も持っていないか同じくひどい名前のはずです。たぶんマユラの母が別の名前を与えようとしたでしょうが、ハニカ自身が断ったのではないかと思います。自分はこの名前に愛着があるからと。
彼女には元々親のつけた別の呼び名があり、立派な真名があったはずなのですが……。その辺の秘密は次の巻以降で証されるでしょう。

クマリ(配分) 
捕らえた獲物を解体して肉や毛皮を配分する、という意味でリーダー向きの呼び名です。

マコリ(真凝)
こちらは逆に、ばらばらにしたのをまとめる意味で、兄とは対照的です。

ユツツ(夕筒)
夕方の一番星という意味、旅の途中で陽が暮れかけた人を導く宵の明星です。

アリネヒコ(在根彦)
アリネ(在嶺・在根)はランドマークという意味です。遠くからでもやたら目立つ、ということ。自分でも認めているところを見れば、自称のあだ名かもしれません(笑)。

シナガ(息長)
長寿を願った名前で、わりとよくあるというか平凡な名前だったりするかも。ただしどっちかというと真名につけられるようなタイプの名前なので、アリネが彼を操れるようにつけなおした呼び名かもしれませんね。

ナツソ(夏麻)・カギラ(耀)シシクシ(宍串)
このへんは作者もあんまり考えてなかった(汗)ので、他の名前とイメージが被らないかんじで、資料内から目に付いたのを(^^;)

クリ・コノシロ・キギシ・フスベ
まだ増えるかもしれないですが、今のところ確定している犬の名前。すべて毛の色からです。栗色、クリーム色、雌雉みたいなチャコールグレーの濃淡まだら、耳や脚の先が汚れたみたいに黒ぶちってかんじ。山犬とは狼の血が混じった犬です。

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