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制作秘話 19

《其の十九》

「巫女さんと妹」の話です。萌えですVv

「妹が巫女さん」ならとりあえず萌えポイントついてるかなと思って書いているわけではない時海です(え?)
うそです。書いてますごめんなさい。
マユラたんは妹で巫女さんです。
早霧もそうですね。

ヨーロッパの民話では、妹が魔女に囚われた兄たちを助けるというパターンが存在します。
絶対に、姉が弟を、ではありません。妹でなければならない理由があるはずです。

妹、というのは兄にとって、絶対的に保護したくなるかわいらしい存在である、これが前提条件ですね。まあ、ツンデレってことも往々にしてありますが(笑)。

もうひとつ、妹は絶対に兄より若い。当たり前ですが。
この兄が、民話の主人公であるべき未婚の男子ですから、その妹はさらに輪をかけて乙女なのです。

すると保護したくなるようなかわいらしさとかか弱さとか手弱女さとか純真無垢さのイメージが喚起され、乙女の属性である心身の不安定さからくる鋭敏な感覚が、プラスされます。
妹、最強です。

これが弟だったら、病弱でなくてはなりません!(あくまでも時海の趣味嗜好的持論・笑)

そんな妹が巫女さんとかお姫さまとか、簡単に男が手出しできないよう保護されたり隔離される身分を持っていたら、敵う者なしです。不安定なことこの上ない揺れる乙女心を搭載しているのです。
その潜在パワーは計りしれません。

よって、深窓育ちの妹姫が、魔女に囚われた兄たちを助けるために、苦難の冒険をする、という究極の経験値獲得成長パターンができあがるのです。
スタート地点とゴール地点のレベルの差がすごく大きい、これをクリアするためには間にいろいろイベントが必要で、ストーリーとして面白いぞと期待できるのです。

ここで巫女さんのポイントについて考察します。
メイドさんは、奉仕してくれます。
お姫さまは、奉仕されます。
巫女さんやシスターさんは、神さまという見えない存在に奉仕していますが、同時に世俗からは尊敬され、かしずかれる存在です。しかも清貧っぽいです。
この不安定な構造、なんか対立するっぽい要素を同時に併せ持つ二重の属性。
それが巫女さんのポイントと思われます。

ギリシア神話に「ヘロの悲劇」という話があります。
レアンドロスという若者が、エーゲ海の孤島にあるアフロディーテ神殿の巫女さんヘロに恋をします。
巫女さんに逢いたい一心で彼は、夜のエーゲ海を泳いで渡ります。しかし、あるとき嵐のために目印として、巫女さんが点した火が消えます。
方向を見失ったレアンドロスは溺れて死に、それを知った巫女さんは塔から身を投げたのでした。

(原典のギリシア神話を再読したところ、私の勉強不足が判明しましたので、訂正します。すみませんでした。岩波文庫にある記述の範囲のみ掲載、二次資料(研究書など)の引用をのぞきます)

この「ヘロ型伝説」は、世界各地に分散して存在します。
不思議なことに、東アジアでは男女が逆転します。
日本でも少なからぬ数十例が報告されています。
相手の男が「僧侶」という例が多く、たまには「おぼっちゃま」。一般の男というのは少ないのですが、たまたまわたしの住んでいる地方のは、庶民でした。
娘は庶民です。

夜、相手の点けた灯し火を目印に海や湖を泳いで渡る、というのがやはり多い(佐渡から新潟へたらい舟漕いで、というパターンにはついぞ笑ってしまった)のですが、山間地だと、山をいくつも走って越えてくることになります。
娘の超人ぶりが怖くなった相手によって、だまし討ち的に殺される、相手は平穏無事な人生を獲得するというもの。

ただ、私が子どもの頃に聞いた地元の話では、相手の男も後を追ってしまうのですがね。

ええ、ここで気がつかれた方も大勢おいでかと。
時海の応募・デビュー作だった業多姫壱巻の元ネタです(笑)。
思うところあって鳴は巫女ではなく姫でしたけど(笑)。
しかも一発逆転で駆け落ちに成功しましたけれどね。
 

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