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制作秘話 18

《其の十八》

なんでマユラは花を髪に飾り、玉を身につけているのか。というお話。

まずは花。
考古学で最古に確認されている「捧げられた花束」は、たしか第4氷河期末期のクロマニヨン人の墓だったような。
墓の土から、そんな場所には咲かないもっと湿っぽい場所(川縁とか)に咲く数種の花の花粉が、大量に見つかった。
供えたとしか考えようがない。
有名な花束は、18歳で亡くなったツタンカーメン王の柩の中にあった、矢車菊の青い花束でしょうか。
「空気に触れたとたんに跡形もなく崩れ去ったが、きっと妻が捧げたのだろう」と発見者カーターが記録しています。

他国の民族もおそらく同じでしょうが、日本の古代・飛鳥奈良時代、男女ともに花を髪に飾りました。
中世ヨーロッパでは、花束を持っていることは、ペストとか流行病の予防になると信じられていました。
今でもハワイとか行くと、花の首飾りをかけてくれますよね。
切り取った花の生命エネルギーをもらうためです。
主ににおいと色の鮮やかさに、それを感じたようです。
実際は光合成で出てくる酸素とか、マイナスイオンですかね? マイナスイオンはすぐ消えるものですけれど。
切り取ることで、それを人がもらえるという観念ができたわけです。

花や木が土に植えてある、生きているときは、その空間や、空間を占める建物・場が守られ、その中にいる人も花というか植物エネルギーに守られます。
が、町中だのお墓の中だの、巨大な建物内など、植物の生きられる土と離れた場所……お墓は土の中すぎる……だと、どうしましょう。
そこで、切り取るともらえる、という観念が出来たのでしょう。
あくまでも観念です。目に見えてあらたかな実効性ではないことがポイントです。


次に玉。
勾玉とは何か。
猪の牙の形からきていて、もともと縄文時代はほんとうに牙だったのが、デザイン化したとか。
縄文時代中期の土器のデザインにあるように、「親子の渦巻き」(水の流れに棒を垂直にさしこむとできる形)だとか「胎児」だとか。
魂が尾を引いて飛び回る、要するに人魂の形とか、諸説あります。

玉には粟粒玉、小玉、管玉、棗玉(楕円に膨らんだ管玉)、算盤玉の形、円盤、楕円盤、色々あります。
いまでも手芸店へいけば、似たデザインのビーズをたくさん売っているし。
それが発展したのが宝石のアクセサリーなわけです。古墳時代には既にピアスや指輪もありました。
玉の恒久性、永遠に変化しない安定が護符とされたのです。なにやらパワーがあると言って、現在でも売られてますよね。

この両方を盛大に身につけているのが花嫁です。身を護らなくてはなりません。今夜からでも次の世代の命を宿すことが定められていますからね(笑)。


日本の神社では「おはらい」というのと「禊ぎ」というのをします。
お参りするときは手を洗うのが正しい作法。それから神主さんは必ず頭の上をはらってくれますよね。鈴つきの祓え串のときもあります。
風で吹き飛ばし、水で洗い流すのが、日本伝来の身の守り方。清潔、というものなのです。
湿気の多い土地柄、病気にならないためには即ち清潔。

そこから出てきた観念が「感染」です。うつるんです。えんがちょって解るかな?
マイカップとかマイ茶碗とかマイ箸が家庭で決まっているのは日本だけ。トイレに専用スリッパがあるのも日本だけ。
他人が使ったものから何か不潔が移りたくない、これが日本人に染みついた清潔感なので、いろんな所へ波及します。
自分が使ったものなら気にならない。お葬式は普段とは違うしきたりをたくさんする。結婚式にしてはいけないこと、受験には禁句、縁起を担ぐ。
「うつるのがいや」これに言霊もかさなっていろいろできあがっているわけなのですね。
 
「うつるのがいや」「身から切り離して見えないところへ捨てれば安全」
公衆衛生を越えた「穢れ」発想という観念に、ずいぶん我々は縛られているみたいですよね。 

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