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制作秘話 16

《其の拾六》

恒例となりました、新刊ネタばらしです。
六之帖のネタをばらしますので、未読の方はご注意下さいませ。

まずはあまりばれていないあたりから。
増田恵さまの「最終巻あとがきイラスト」、向かって左後ろの隅でため息ついてるのが、犬射原さんです(笑)。
鳴が抱えているのはミニミニ阿王ちゃんですので、よろしくです。
このくらいのサイズなら、一家に一頭ぜひ欲しいですね。

では春の花の話題から。
伍・六巻は春の話です。
なので、春の花でどうしても出したかったのが、私の好きなスイートピーとフリージアとチューリップ……でも、室町時代にはないんじゃないの?
チューリップは鬱金香(うこんこう)といって、江戸時代後期には輸入されていたのですが、鬱金=ターメリックの香りって、カレーをイメージしてしまう……(笑)

調べて、スイートピーとチューリップは原種に近い植物が、日本にも元から生えていたことが判明しました。
スイートピーは伍巻で砂浜に生えていた「浜豌豆」、チューリップは六巻で修練所の庭に生えていた「甘菜」です。
そのつもりで脳内変換をお願いします(笑)。
フリージアは和名「浅黄水仙」ですが、アフリカ原産でアジアにはないようです。


えーっ、六巻では青津野の趣味がばらされているようですが(汗)、作者の趣味ではありませんので、懸念されました方、どうぞご安心下さいませ。
犬より猫が好きなのは作者も同じですがって、そういうことじゃなくて。

あとがきにも書きましたが、この時代の武将には、女性とは世継ぎをこしらえるための義務で、ほんとの快楽は少年と、えっちをするという考えの者が少なくありませんでした。

また、庶民は自由恋愛でした。もちろん男女で(笑)
壱巻で逢い引き(デート)の待ち合わせをしていたり、キャラにもナンパしまくりな銀さんとか出てきますが、実際そういうかんじで活気があったみたいです。
絵巻物に人混みでの痴漢が描かれていたりして、笑えます。


今回の民俗学ネタは「蝶」と「桜」です。
「夢見鳥」と、蝶のことを本文に書きましたが、「さまよえる魂」を表すのが蝶で、今でも「お葬式の時に見つけた蝶を捕まえてはいけない、死んだ人の魂がお別れを言っているのだから」とたしなめる地域があちこちにあります。

「桜」は生命の神のシンボルツリーです。
美しくてけれど儚くて、でもまた蘇って咲く。
同時にそれは人の姿でもある、と日本の神話は語ります。
日本人が桜が好きなのは、生命力と同時に人間の儚さや無常観を背反して見られるからではないでしょうか。
壱巻のカバー(表紙)が、初夏から真夏の話なのに、なぜか桜の下のイメージだったのは、そういう日本の思想から、シリーズ化できるとしたら最終ラストシーンは桜の下と決めていると、担当さまに私がどうやら語ったかららしいですね。
二年も前でよく憶えてないのですが。

シリーズ全体もほぼ一年間、四季の話でぐるっと循環する、日本神話的再生の「環」の話にしたいとか、語ったわけです。
でも仏教的無常観も出したいとか、そんな意向を担当さまに伝え、そんなわけで、カバーには花をあしらい、最初と最後は桜のイラストになってゆきました。
伍巻の崩れる砂を積む虚しさは仏教的でもあり、ギリシア神話的でもありますね。

無事最後まで辿り着き、イメージ通り、「ピエタ」風に、聖母みたいな鳴と、その膝で安らいで眠る颯音を描けてよかったです。
本当に皆さま、最後まで物語を支えていただき、ありがとうございました。

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