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制作秘話 14

《其の拾四》

今回は趣向を変え、ライトノベルの歴史です。

現在のような形でのジュニア小説文庫ができたのは、1970年代だそうです。
盛んになったのは、1980年頃から。
その辺は詳しい方が多いのでそちらに譲るとしまして、もっと昔の歴史です。



それは江戸時代。
「草双紙」(くさぞうし)というエンターテインメントの小説本がありました。
始まったのは18世紀の中頃。
内容によって表紙の色が違い、アダルトなのは特にたびたび発禁になったようです(笑)。
これが文化文政期(1804〜20くらい)に発達し、幕末にかけて「合巻」(ごうかん)という厚めでシリーズになった本が流行します。
これが、現在のライトノベルと大変近いものなのです。



まず形態。
大きさが今の文庫本と大して変わりません。
縦五寸の横三寸(約15cmX9cm)。
表紙は錦刷り、つまり豪華なフルカラー印刷で、登場する人気キャラがポーズを決めています。
キャラの顔は当時の人気歌舞伎役者にイメージを似せました。
美青年アイドルですね。
中にはモノクロの挿絵がふんだんに使われ、ストーリーは展開の早い奇譚(ファンタジー)世話物(ラブ)、ホラーやアクション。
何たって、主人公キャラがかっこいい。
アクションがシャープ。
モンスターに迫力がある。
悪役が憎たらしい(笑)。
そしてラブが切ない。
私の手元の資料では、それほど知られていないそこそこ人気のシリーズでも半年に一冊ペース、5年で10冊シリーズです。
もっと人気のシリーズだと、新刊が年に3〜4冊、数十冊シリーズになったようですね。
代表作は「南総里見八犬伝」。
28年間で百冊を超えていますよ。
戯作者(小説家)・絵師(原画イラストレータ)・版元(プロデューサー兼編集者)・彫師(印刷の版を彫る)・刷師(印刷屋さん)・綴師(製本)とすべて手作業だったことを考えると、パソコンや機械に頼っている現在と変わらないペースとは、いくら一冊が40p位だったとはいっても、すごいことですよね。
主な読者は商家や武家のお坊ちゃんお嬢さん、特に女子向けラブファンタジーの人気が高かったみたいです。
本は買うほかにレンタルもありました。
このレンタルはデリバリーです。
「合巻」に口絵はまだ無かったようですが、大正時代に少年向けのエンターテインメントとして、忍者など荒唐無稽なアクションが人気だった「立川文庫」には、見開き折りたたみのモノクロやカラー口絵が入りました。
これも表紙がカラーで「キャラのかっこいいポーズ」なんです。
それ以来少年系文庫には口絵が欠かせないのでしょうかね?

時海は自分が日本の伝統文化職人の技能後継者であるのを、誇りに思っています(笑)。

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