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制作秘話 13

《其の拾参》

恒例新刊発売記念ネタばらし、伍之帖編です。

今回は伍之帖のネタをばらしますので、未読の方はご注意をお願いいたします。

まずは内容的にはそんなにばれてない話からしますね。
この辺見えちゃっているから。
あっ、でも、「いろどりつづり」のネタばれになっています。
短編集は読んでいない方もいらっしゃるかもしれませんね。
じゃもう2行空けて。


伍之帖は「いろどりつづり」の幕間シーンのラストから連続的に繋がってます。
時間は四半時(約30分)も経ってないでしょう。
場所も全然移動していません。
つまり、幕間シーンは何だったのか、というと伍之帖序章の前半だったんですよ(笑)。

ではネタばらしです。
常々時海は、学校で日本史と世界史が別々に教えられるので、誰と誰が同時に地球上に存在したのかが判りにくいと思っていました。

例えば、織田信長はイギリス女王エリザベス一世より1歳だけ年下です。
そして21年早く亡くなりましたが、殺されなければ同じ時代を同じくらい生きたでしょう。
世界史の年表を眺めては、よくそんなことをぼんやり考えました。

鳴と颯音が生きていた時代、世界では何があったのか、それを著してみようと考え、船上でコロンブスだのダ・ガマだのの航海話を二人に聞かせたのです。

日本に鉄砲が伝わったのは1543年、業多姫の年代からすると20年あまり先と、教科書に書いてあります。
が、「公式に記録された最初」というだけで、飛び道具の一種としてアジアで改造された銃は、少数ながら既に日本に持ち込まれてあったようです。

ポルトガル人が乗っていたのはポルトガルの船ではなく、中国大陸の船ジャンクだったと資料にはあるし、持ち込んだのも旧式のマスケット銃だったらしいです。
この銃は改良され、15世紀後半、あっという間にボウガン(弩)を、ヨーロッパでの武器の、必需品の地位から引きずり降ろします。
颯音と鳴に、十星が扱っていた商品のボウガンが渡され、初期のカノン砲や旧式マスケット銃と共存しているのは、なかなか短い期間のできごとなわけです。
外国船の難破記録が、14世紀の日本海に複数残っているのも事実です。

香料諸島へポルトガルの船がやってきて十数年、日本から奴隷が輸出され始めるのもそろそろです。
カンボジアやタイにも大勢の日本人が、戦国時代後半にはいました。
戦国時代前半でも、マカオや香港付近までは進出していたようです。
彼らから日本人の宗教的な寛容さを知って、キリスト教の宣教師たちは日本を目指しました。
1582年、天正遣欧使節の少年たちは、インド洋に入るまでのアジアの寄港地で、大勢の日本人を目にしています。
女性もたくさんいました。

と、教科書に書いてあったかどうか、たぶんなかった気が私はするのですが。
せいぜい山田長政か、じゃがたらお春か。
特殊な存在のように書かれていますが、そんなことはありません。
アンコール・ワットではなかったかもしれませんが、カンボジアのアンコール朝末期の遺跡には、当時の日本人の落書きが残されているそうです。

ちなみに颯音が気に入った「びすこちょ」とは、硬いビスケットで、当時のポルトガル・イスパニアのキャラック船での主食です。
たぶん乾パンみたいで甘くなかったと思うんですが。
無事家へ帰ったら、囲炉裏の火にかけた焙烙(ほうろく・当時のフライパン)で、ビスケットというかパンケーキみたいなのを焼いてみようと考えている颯音、想像したら笑えます。

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