風の鳴る音
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制作秘話 11

《其の拾壱》

前回から引き続きまして、「いろどりつづり」のネタばらしです。
後半第五話から第七話と幕間の「室町時代の無駄知識」。
本文未読の方はご注意をお願い申しあげます。


☆第五話「萌黄野の花に春潤う」
書き下ろしです。
商業出版作品では、初めて三人称で書きました。
業多姫でのデビュー前、児童文学のアンソロジー出版に載せていただいた、別名での作品も一人称だったし。
銀の過去が少しお解りいただけたらと願って書きました。

この時代、出血多量で死ぬよりも、傷口から菌が入って破傷風や敗血症で死ぬ方が断然多かったのです。
それを治療して防ぐのが金創医、つまり外科医です。
火傷や骨折なんかも治療してました。
といっても戦がなければ仕事がないので、町医者のようなこともしたようです。

この時代の女性は名字を名乗らなかったかというと、けしてそんなことはありません。
鳴は架空の人物ですが、もしも記録に残ったとしたら「美駒鳴子」という名前になったはずです。
早霧も「蓮井早霧」という名前のはずです。
しかもまだ結婚したら名字が変わるという考え方がないので、結婚後も旧姓で呼ばれます。
名字が変わるのは、男女ともに養子になったときですね。
庶民でも自分の住んでいる村をそのまま名字として、よその土地では名乗りました。


☆第六話「早緑月を待つ冬陽」
「月刊ドラゴンマガジン2月号増刊 ファンタジアバトルロイヤル2004年冬号」掲載
懐かしくて温かくて不思議な話を書いてみたかった、そんなかんじです。

夫婦でお正月に若水を汲む、というのは西日本に残る習慣です。
山の女神さまを恐れるというのは全国的にありますが、東日本のやまんばに対し、九州では山姫さまになります。
この女神様は山姫さまのイメージです。

元旦に初日の出を拝むとか、大晦日の夜に眠っている間とかに一つ歳をとるというのが、昭和十年代までの日本人の感覚でした。
新しい着物を身につけて、古い着物イコール古い自分からは脱皮するんですね。

おまけ、仲買人は「すあい」と当時呼ばれていました。
教科書には「馬借」という運輸業者を示す単語は出てきますが、同じくらい活躍していた「すあい」が出てこないのは謎ですね(笑)。


☆第七話「碧らむ雪」
書き下ろしです。
颯音と迅の初仕事というか卒業実技試験の話で、「雪帰月」と共通する雪の冷たさを描こうと願いました。
颯音と迅の仲がよかった頃、こんな風だったんですね(笑)。

鳴と颯音の縁が繋がっていたという過去話なのですが、実は構想段階ではもう一つの過去話として、鳴と阿王丸の出逢いと結びつきを綴るという案もありました。
全部でお話は八つ。
でもそれだとページが長編よりも厚くなってしまうので、やむなくそちらは没に。

この時代、製鉄は砂鉄が中心でした。
安物のまとめ売りを「十把一絡げ」といいますが、これは刀のことです。当時の消耗品の代表ですね、三人切ったら切れなくなるような刀は。
材料としてもっと多かったのが、リサイクル。
戦場に残された死体(活躍の証拠として、首は勝ったほうの武士が取っていってしまうのでついていない)から使える物は全てはぎ取られ、裸の骸は獣や鳥の餌になり、しかし感染症の発生源や狼のたまり場になるのが怖いので、近くの住民が大きな穴を掘ってまとめて埋めました。
それが戦の後処理です。


☆幕間
それぞれの話が本編の流れのどの位置に挟まるかを説明してほしいと、担当さまに指示されまして、書き加えました。
ついでにラブラブシーン全開フルスロットル(笑)。
ラブラブ満載短編集というのが、コンセプトですから。
「迷処」というのは、わりと好きなモチーフですね。
そんなお話もいつか書きたいです。

ここだけの話、この幕間が伍之帖の大事なポイントになってます。
伍之帖をお読みになる直前には、ぜひ幕間だけでも再度お読みになることをお勧めいたします。

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